真宗本廟から北へ四キロメートルほど、京都御所にも近い市内中心部、歴史と現在が融合したエリアにある泉龍寺でお話を伺った。
取材当日は、子育て支援を目的として、門徒さんを含む地域の方々の未就学児をもつ親子を対象とした、ヨガとアロマオイルのワークショップが開催されていた。
取材中も、本堂からは終始賑やかな親子の声が聞こえていた。その堂内ではアロマオイルの良い香りに包まれ、広い空間と畳の上で自由に過ごす子どもたちの姿に、自然と皆が笑顔になり、寛いだ時間が流れていた。「日常生活の中で気軽に立ち寄れ、お寺の本堂で楽しいこと、嬉しいこと、そしてつらいことなどを共有できる場を提供できたら」と話される住職とご家族からは、明るい雰囲気があふれていた。
一人ひとりの置かれた状況は違っても、それぞれに悩みを抱える者同士が、安心して身を置き、自分の言葉で表現し、お互いの声を聞き合える、「ともになやみ、ともに生きる」場として、お寺の場が開かれているのだと思えた。
また、住職からは、泉龍寺の「御堂衆」としての歴史のお話も伺うことができた。泉龍寺の開基である祐賢は、「御堂衆」として教如上人に仕えた人物。教如上人の二男観如上人が得度される際には剃刀役を務め、その観如上人が若くして亡くなられた葬儀に際しては導師を勤められた。さらに、教如上人が亡くなられた時には、自害を試みたものの一命をとりとめたと伝えられ、教如上人との強い絆をみることができる。それ以降、歴代住職が「御堂衆」として本願寺に仕え、相続されてきたとのことであった。
後日、春のお彼岸にはお寺の年中行事の法要がお勤まりになり、外陣にてお勤めされる住職とご家族の姿が深く印象に残った。長らく堂衆として真宗本廟を敬いお仕えされた住職は、「本願寺が本堂であり、自坊はお内仏である。何においてもご本山の御用を優先させていただいた」と話された。その表情に、住職の人となりが表れていた。
現在は自坊に戻られ、お寺を盛り立ててくれる副住職家族とともに、これからの教化活動を新たな課題として見据えられていた。
(京都教区通信員・堅田一葉)
『真宗』2025年9月号「今月のお寺」より
ご紹介したお寺:泉龍寺(住職:泉 康夫)
※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しております。































