八月、砺波市五郎丸にある淨蓮寺では、子どもたちの元気な正信偈のお勤めの声が本堂いっぱいに響き渡っていた。


             本堂で時間を過ごす子どもたち

 この日参加したのは三十四名。夏休みの間、毎日お寺で過ごす子どもたちだ。

 淨蓮寺のすぐそばには小学校があり、近年は新しい住宅も増えている。学校の隣には放課後児童クラブがあるが、さまざまな事情で利用できない家庭もある。そんな中で、両親の帰りを一人で待つ・鍵っ子・たちを中心に、淨蓮寺では子どもたちを受け入れている。参加するのは門徒の子どもに限らず、地域の多くの家庭にも広がっている。

 この活動の始まりは、およそ二十年前にさかのぼる。前住職のお連れ合いがご病気となり、その看護のために坊守の久美子さんは小学校教員を退職された。当時この地域には放課後児童クラブがまだなく、久美子さんは看護のかたわら主任児童委員として、その立ち上げにも力を尽くしたという

              「正信偈」のお勤め

 そんな折、前住職から「夏休みにお寺で子どもたちを集めてみてはどうか」との提案があり、「淨蓮寺子ども会」が誕生した。最初はご近所の数人から始まった集まりも、いまでは三十名を超える程に輪が広がった。

 ここに集う子どもたちは、みんな本当に「かたい」。「かたい」とは、富山の言葉で「おりこうさん」という意味だ。住職の宏昭さんや久美子さんの話をよく聞き、正信偈を一生懸命にお勤めする。そのあとは宿題をし、おやつを食べ、そして思いきり遊ぶ。真夏の炎天下でも元気いっぱいの笑顔が絶えない。


              本堂に貼られた「やくそく」

 そんな子どもたちを温かく見守るのは、住職ご夫妻のやさしい人柄と、長年の教員生活で培われた経験と心構えだ。本堂の壁には、大きな紙に書かれた「やくそく」が貼られている。

 「あいさつをする」「人のいやがることはしない」「使ってもいい場所」「お片付け」──どれも小学校一年生にもわかるシンプルな約束ばかり。そしてもう一つ、「どの子もその家庭の宝物である」。その思いを何より大切にしている。

 この二つの・約束・があるからこそ、三十名を超える子どもたちも安心して過ごせるのだという。

 今日も淨蓮寺の本堂には、子どもたちの笑顔と笑い声があふれている。お寺が地域のあたたかな居場所となり、次の世代をやさしく包み込んでいる。

(富山教区通信員・山田晋太郎)


『真宗』2025年12月号「今月のお寺」より

ご紹介したお寺:富山教区第2組 淨蓮寺(住職:(あま)野 宏(ひろ)(あき)

※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しております。