葬儀をめぐる環境は、この十数年で大きく変化しました。インターネットを介した「格安葬」が広がり、葬儀は「できるだけ安く、簡易に済ませるべきもの」として語られることが増えています。それは同時に、地域のお寺が担ってきた葬儀の意味や役割が、見えにくくなっているということでもあります。

そんな中、今回は大阪教区において「お寺での葬儀」に積極的に取り組んでいる恩樂寺(大阪市東住吉区)をたずね、その実践とそこに込められた思いを聞かせていただきました。

住職の乙部大信氏

お寺葬に取り組む理由

15年前からお寺でのお葬式について熱心に取り組み、発信し続けている恩樂寺の乙部住職。今では葬儀の約8割が恩樂寺本堂での勤修であるとのことです。約一時間半ほどのあいだ、その思いと実践について聞かせていただくことができました。

「我々の最後の生命線は法話。お守りも、御朱印も、何もない僕らは法話しかないんです」

序盤、乙部氏はまずこうおっしゃいました。

「一番聴いてもらえる場所は、自宅や会館よりも本堂です。そこにはホストとゲストの立場のちがいがあります。ホストはバタバタと忙しく動き回る必要があります。お寺ならゲストとして、ゆったりと聞いてもらえるんです」

お話を聞く前は、たとえば経済的なメリットのようなものが取り組みの原動力となっているのかと想像しながら取材に臨んだ筆者は、その志の清廉さに驚かされ、自身を恥ずかしく思うこととなりました。

「お寺での葬儀の中でゆっくりと接する機会が増えると、それだけこちらの思いも伝わって、その後も熱心にお寺に関わってくださるようになることが多いんです」

お寺葬の会場例

取り組みの実際

では、実際に取り組んでいるお寺葬とはどのようなものなのでしょうか。

「入口としては、費用の安さ、これに尽きます」

どれだけ熱心に仏法の尊さを伝えようとしても、そのことをきっかけにお寺に来てくれる人はとても少ない、と乙部氏は冷静に現実を見つめます。ではその安い費用は、どのように実現するのでしょうか。

「まずは第一報をお寺にしてくださることが大前提です」

ファーストコールがお寺に届くことで、そこからお寺が葬儀社を手配し、価格面などすべてにおいての主導権を持つことができるのだそうです。そのことにより、会場費、荘厳費はすでにお寺の設備があるので無料にすることができ、手続き、配車、棺など、必要最小経費の分を葬儀社にお手伝いしてもらう形にできるとのこと。

「あらかじめ葬儀社がどんなプランを用意しているかを勉強しておく必要があります。そして、ファーストコールを受けた住職が、『そちらでこういう葬儀がしたい』と連絡するんです。とにかく、『安くしたい』と伝えると、大抵は『直送プラン』が提案されます」

そこからさらに、何が不要か、何が必要かの交渉段階においても、喪家と葬儀社の交渉に同席することで、価格面で納得のできる「安さ」を実現していきます。

その分、葬儀社のサポートの少ない、手作りの葬儀をする必要が出てきますが、動くことのできる遺族に車や食事の手配をお願いすると、大抵は積極的に動いてくださるもので、その中で参加者意識も高まり、温かな葬儀になっていくのだそうです。住職と相談しながら葬儀を作っていくことにより、お寺へ所属している感覚も高まり、住職家族と親交が深まるという点も、お寺葬ならではの利点と言えます。

お寺葬についての発信が取材で取り上げられることも

(『中外日報』2017年9月6日8面)

仏教界全体で考えるべき課題

とはいえ、第一報から全てをお寺主導で取り仕切るのは大変ではないのでしょうか。

「たしかに負担は大きいですよ。二十四時間体制ですから、旅行にも行けないし、電話は抱きしめて寝てます」と、厳しくも少しユーモアを交えながら語る乙部氏。そこには並ならぬ覚悟が必要であることが伺われます。しかも、その覚悟が家族全体に及ぶことについてお尋ねすると、

「最初は不安がられました。でも、電話を取ってくれた人に手当てを出すようにしたら、みんなだんだん積極的になってくれました。今では妻が電話機を枕元において寝てます(笑)」

自坊でのこのような取り組みに加え、乙部氏はお寺葬についての発信にも力を入れています。その背景にあるのは、「ネット仲介型格安葬」が急速に普及していることに対する危機感のようです。

「電話すると、オペレーターが地域で契約している葬儀社とお坊さんに依頼する。このプランでやってください、と指示を出すだけで後は丸投げなんです。葬儀社からは2〜3割、お坊さんに至ってはお布施の6割以上が手数料として納められる。電話一本のオペレーティングだけで儲ける仕組みに加担して、お布施6割も取られて平気な顔をしてるお坊さんって一体何なのでしょう」

確かに、私たちは僧侶であること、お寺を守っていくことの根本が揺さぶられる状況の中に立たされています。今回の取材で、そういったことに対しての意識が問われていると強く感じました。できることはしていかなければ、そんな風に思えたのは、乙部住職の熱い思いが伝わってきたからなのでした。

「全部をマネしていただきたいわけではありません。何かの足しにしてください、というつもりで発信しています。ファーストコールを受けることだけでも取り組めば、葬儀がすぐれた教化として機能するようになります」

より詳しく知りたい方は、恩樂寺ホームページをお訪ねください。100%の情報が、120%の熱意で公開されています。

◆恩樂寺ホームページ⇒https://www.onrakuji.com/

(大阪教区通信員 高名 等)