お斎の献立・レシピを紹介します!
私がお預かりしている法讃寺は、静岡県掛川市、東海道日坂宿にあります。
実は、この法讃寺では、毎月開催の十日講をはじめ、年4回の朝ヨガ、報恩講、お花講、太子会、鏡開きなどの行事でお斎を振舞っています。これは手間や時間はかかるものの、お寺に集う人々がお斎を通して「いのち」をいただいていることを実感していただける、大切な仏事の一つとしてお斎を考えているからです。
より多くの行事で多くの方々にお斎の場についてもらいたい。こうした願いを同じくする方が、「どんな献立にしよう…」と悩まれた時の手助けとなるよう、今回は献立のいくつかや、報恩講で行っている本格的なこんにゃく作りのレシピをご紹介します。
十日講
法讃寺で毎月10日に開催している十日講は、3代前の住職の月命日に合わせ始められました。一時期途切れていましたが、ご門徒さんの呼びかけにより30年前に復活しました。この十日講では、近所のご門徒さんが集まり聞法し、お昼には必ずお斎をいただいています。
今回は、ある秋の月の献立をご紹介しましょう。
・さつまいもとむかごのご飯
・しょうがの佃煮
・大根鍋
・さつまいもの柚子煮
・柿なます
・里芋の煮物
・かぼちゃの漬物
見てのとおり季節のもの、また地元で採れたものを中心とした食材です。
また、工夫している点として、
・あたたかいもの
・やわらかいもの
を心がけて作っているということがあります。
聞法に集まってくださるお年寄りが食べやすいように、年齢層に合わせた献立づくりも大事だと思います。
報恩講
つぎに、報恩講をご紹介します。他の行事は坊守、若坊守で作っていますが、報恩講のお斎はご門徒さんにもお手伝いいただいています。
ご門徒さん達が自分の畑で採れた野菜や、報恩講用に作ってくださっている野菜を持ってきてくださるので、食材はいただいたものでまかないます。そのために献立は固定していません。
その中で、唯一固定しているのは、こんにゃくいもから作るこんにゃくです。もともとご門徒さんのお茶畑の隅に自生していたこんにゃくいもを、捨てるのももったいないと、ご家庭でこんにゃくをつくったことのあるご門徒さんが報恩講で作っていただいたことをきっかけに、25年以上続く献立の一つになりました。
こんにゃく芋は、そのまま食べることはできず、適切な調理法が必要な食材です。報恩講で手づくりしているところはあまりないと思いますので、今回、詳しいレシピをご紹介しますので、ぜひお斎だけでなく同朋の会や各種行事でのイベントとしても挑戦してみて欲しいと思います。
お斎で人と人がつながる
法讃寺において「お斎」はいのちについて学ぶ場(食べる人側の視点)であると同時に、世代を超えた横のつながりができる場(作り手の視点)である大切な仏事として受け止めています。
それも、報恩講以外のお斎はすべて坊守1人で作っていました。行事ごとにお斎の献立を考え、1人で作り続けることは大変なことだったと思います。もし、自分がやめてしまえば、この仏事は終わってしまうのですから。
しかし、坊守は、お斎をつくり続けてきた理由を
「食べる事は人生の楽しみの一つです。食事の時間、食事の場を皆さんで共有する事によってつながりが増え、お寺に来るのが楽しみになってほしい。食べる事は人をつなげる、作るときも食べるときも会話が弾むでしょう」
と語ります。最近は若坊守も一緒に作っており、1人で歩んできた仏事が受け継がれているように思います。
最後に、坊守・若坊守がお斎の献立を決める際気を付けていることもご紹介します。
それは、「自宅で作ることができるもの」にすることです。
とくに、報恩講では、様々な世代のご門徒さんがお手伝いに来てくれるため、身近な献立にすることで会話がはずみ、初めてお手伝いに来てくれた方とも打ち解け易く、ご門徒さん同士で横のつながりができていくそうです。
「お寺で教えてもらった料理を家で作ったよ」
「こんなアレンジをしてみたよ」
など、報告をいただけるのも嬉しいことの一つです。
食材の切り方、味付け、レシピを皆さんで共有しながら、若い世代、次の世代へとつながる情報交換の場となり、この仏事が法讃寺だけでなく、広く伝わっていって欲しい。この取材を通じて、改めてそう感じたところです。
(岡崎教区通信員 小野大樹)
※ こんにゃく芋は生で食べることはできません。充分にご注意ください。
参考サイト:「こんにゃくができるまで」(一般財団法人日本こんにゃく協会)