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神奈川教化センターでは、昨年よりグリーフケアへの取り組みが行われています(2017年10月27日記事参照)。「別院でのグリーフケアの歩みは、まさしく『真宗グリーフケア』でなければならない」と横浜別院輪番も語るこの取り組み。今月も届いたレポートは、いよいよ最終回。ぜひ、ご覧ください。
♣ 真宗大谷派本願寺横浜別院 神奈川教化センター企画広報部会主催
「 グリーフケアの基礎を学ぶ研修会 第三講を終えて 」
レポート : 企画広報部主任 鞠川 卓史
5月10日、第3講「グリーフケアの基礎を学ぶ研修会」が開催されました。最終講となる今回は「『聴く力』を育む」を講題のもと、引き続き一般社団法人「リヴオン」の尾角光美氏(代表)と水口陽子氏(理事)をファシリテーターにお迎えし、「聴く力」を高めることを目的とした体験型のワークを中心に研修は進められました。
「共感(もどき)ワーク」では、実際に1人の受講者の悩みに対し、1人ひとりが共感してコメントをすることを通し、共感して聴くということ、または共感して聴いてもらうことはどういう感じなのかを体験しました。そこでは、共感しているはずが、つい否定したり、アドバイスや自分の話にすり換えてしまうということが起こりやすく、それは相談者と聴き手の間に断絶すら生じさせてしまうこともあると考えさせられました。
さらに、「ロールプレイ」では用意されたシナリオ(死別に対する悲嘆)に従い、相談者、聴き手を演じるというものでした。シナリオに感情移入することで、相談者役は遺族の気持ちを知り、聴き手役は遺族に向き合う上で何を大事にするかを意識することを目的としました。
この体験を通し「聴いてもらえることの安心感・期待感」を相談者役が感じたり、演技だと分かっていても、相談者への返答に窮し「無力感のなかで、ただ聴くしかない」ということを聴き手役は痛感させられたことかと思います。
また、私たちは「死」という言葉を聞くと「可哀想だ」「大変だ」と決めつけてしまいますが、ここでは相手の話に対して「善悪・優劣・悲喜」で判断しない「Don’t judge(ままに)」を大切にすることを教えられました。
「当事者ミーテイング」は、悩みや不安を「見える化」することによって「自分に何が起きているのか」「どうしたいのか」を明確にすることができるというものです。「訊ね聴く」ということを通じ、相手の悩みや不安を共有し、掘り下げていくことで相談相手が本当に必要なことにたどり着くことを目的としたワークです。
尾角氏自身の経験から大切にしているワークで、「死別」を経験した遺族にとって、悩んでいる状態から「自分はどうなりたいのか」という望みや願いに繋げていくようなグリーフの支えは大切なことと述べられました。
このような研修会は初めてでしたが、雰囲気も良く、あっという間の全3回でした。グリーフケア・サポートが当たり前にある社会の実現を強く願われるなかで、お寺という現場においての可能性を多く示唆していただきました。
本来、「悲嘆に寄り添う」ということはお寺で大事にされてきたことではありますが、「亡き人と繋がる」「亡き人を想い続けられる」、そういう場所でもあるということを再確認しました。今後、それぞれの現場においてグリーフケアの活動へ1歩踏み出して欲しいとの願いを込め、最後にご輪番より修了書が授与されました。
(おしまい)
( 横浜別院だより「本願力」第73号より )
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