山陽教区第5組の推進員の皆さんは年に数回、聞法の場として「推進員の集い」を開かれています。従来は「正信偈」や『和讃』をテーマに学びを深める内容で行われていましたが、このたび新たな試みとして、東本願寺がしんらん交流館のホームページ上で配信を始めた「いま、あなたに届けたい法話」の動画を活用した取り組みが行われましたので、活用事例の一つとしてその様子を取材させていただきました。
-聞法会に法話動画を活用した経緯-
今回、講師を務められた平山啓住職(山陽教区第5組傳法寺)にこのような形での開催に至った経緯を伺いました。
「以前から本山のホームページでは過去の報恩講や講演会などの法話が公開されていますが、それを単なるアーカイブとしてではなく、もっと積極的に活用してみてはどうかという思いがあり、いつかはこういう取り組みを自坊で行おうと考えていました。その中でこのコロナ禍の状況になり、東本願寺が積極的に法話動画の配信を始め、そこへたまたま組内の推進員の集いが重なったので先にこちらで行ったということですね。推進員の集いも昔は意見交換が中心の会でした。数年前から学習会のような形式で取り組んできましたが、逆に今はお勉強会になってしまっているので話し合いの機会が減ってしまった気がするんです。私としては内心もうちょっと会話が多い会にしたいなという思いがあったんですね。その雰囲気づくりのしやすさという点からもこのインターネット配信の法話を活用したいなと考えました」とのことです。
法話を視聴する参加者の皆さん
-使用機材(機材/メーカー/型番)-
タブレット端末 / bluedot / BNT-791W
プロジェクター / Benq / MW529
スピーカー / TDK / TREK Micro
Wi-Fiルーター / NEC / PA-MP02LN-SW
アプリ / Microsoft / モバイルOffice
タブレット端末とプロジェクターを有線接続し、タブレット端末でPowerPointを使って進行しつつWi-Fiにつなぎホームページも閲覧。またタブレット端末とスピーカーをBluetooth接続し、会場全体で聞き取りやすい音量を確保されていました。
-当日の流れ-
当日は、まずプロジェクターとタブレット端末を使ってしんらん交流館ホームページの画像をスクリーンに映し、配信されている法話動画へのアクセス方法を実践しながら説明したあと、その中から2つの動画を取り上げて皆さんで視聴。そして見終わった動画について思ったことや感じたことを自由に発言し合う座談の時間が設けられました。
-実際に使用した動画-
-参加者の感想・意見-
法話の内容を受けて、家庭内のことなど身内話を交えながら「自分にも同じような経験や思いがあり共感できた」という声や、法話の中で紹介されていた2023年に厳修予定の慶讃法要に対して思うこと、さらには「社会的価値観と仏教的価値観とは何か」といった問いなど様々な意見が交わされました。
感想を述べる参加者
法話動画に対する全体的な感想としては「ゆっくりとした話のテンポで聞き取りやすく、話の内容も分かりやすかった」や、「長すぎず適度に短い話でよかった」といった声が挙がりました。
これには平山住職も共感し、「正直言うと私も長いお話が苦手なんです。あまり話が長すぎると話すよりも聞くほうに偏ってしまいがちなので、この15分という長さがいいような気がしたんです」と仰っておられました。
-新たな試みを模索する-
現在のコロナ禍、またアフターコロナを見据えてこれからの聞法の場づくりをどう考えておられるのでしょうか?
平山住職に伺いました。
今回の取り組みをされた平山啓住職
「徐々におさまってきてはいますが、まだ従来の法話・法座のスタイルで行うとなると余程感染が落ち着いてこなければ難しい状況にあるのかなと感じています。今後に関してはやはりこの動画を活用したいなという思いもあるんですね。各自、自宅で見ていただくことも可能ですし柔軟に対応できるなというのが私の考えなんですね。動画を各自で見ていただき次の機会に「どうでしたか?」という座談中心の会を設けるなど、いろいろとやれることがあるのかなと思います。ネット環境が整えば、例えば大勢が集まれない状況でも各お寺で集まっていただいて同時配信をするなど、将来的にはそういうことも可能になってくるのではないでしょうか。今はそこまでできなくともネットでのこういう配信が増えてくればそれを使わせていただいたり、いろいろと選択肢が増えるので取り組みやすいのかなという気がしています」。
最後に平山住職に「今後こういった取り組みが浸透し、ネットや動画を活用する流れになっていくと思われますか?」とお聞きしたところ、「いやあ、それはわからないです」と返ってきました。ご自身の中でどう捉えておられるのでしょうか?
「これからも機会を見つけてこういった形でもやっていこうかなとは思っていますが、ご門徒もネット操作に不慣れなご高齢の方が多いですし私もまだまだ手探り状態でわからないことだらけです。また、人が集まるというところに意義があるとするならばその大切さが見直されることにもなるでしょう。お寺は良くも悪くも昔ながらのことをやり続けていく面があると思うんです。私としては同じことをずっとやり続けるのではなく、何年かこういう方向でやってみたら次はこういう方向でというようなものを練っていきたいなと考えています。ただ、私ひとりのアイデアだと限られてしまうので皆さんにもいろいろと聞きたいなと思っています」と話して下さいました。
徐々に人数制限や感染防止策の徹底など、各自治体や団体が定めたガイドラインに則して従来の集まりや行事等も再開されつつありますが、まだまだ難しい判断を迫られる状況の中、方々でオンラインを活用した様々な新たな取り組みが模索されています。それぞれの地域性やネット環境などの必要な設備が整っているかどうかという条件にも左右されるため、オンラインを活用した取り組みも万能であるわけではありません。しかし、今回のような法話動画をはじめ、上手く活用できればやはり有効なツールになり得るということを感じました。
(山陽教区通信員 内藤和裕)