伝道掲示板
腕が上がらん 熱が出た
ワクチン接種の証
頭が上がらん 念仏が出た
如来摂取の証
(圓德寺住職)
高山市漆垣内に位置する圓德寺、このお寺には掲示板が二つあります。一つは、1983年4月、開基浄安の五百回忌法要を記念して、当時の仏教青年会のメンバーが手作りで設置した山門前の掲示板。もう一つは、2021年3月に建立された境内の掲示板で、毎月の伝道掲示を応援するご門徒の方から寄進されたものです。現在は、毎月2ヵ所、計4枚の法語が掲示されています。
掲示板を用いた文書伝道に対する思いは、2020年から続く新型コロナウイルス感染症の影響によってより明確になったと住職の窪田純氏は語ります。
「積極的に寺院に集まってもらえず、仏事のあり方も変化を余儀なくされ、焦りばかりが募っていました。しかし一方で、近所の方やご門徒から掲示した言葉に対する感想が寄せられるようになり、掲示を楽しみに待っておられる方がいることを知ることができました。決して一方的ではなく、必ず響きを受け止めてくださる人がいる。響きを受け止めてくださる人がいる以上は、決して軽視できるものではないと思います。何より、雨の日も雪の日も、休むことなく響きを伝えるために立ち続けてきた掲示板の尊財(存在)の大きさをあらためて知らされました」。
新型コロナの影響がお寺への願いを生じさせ、その願いが形になった。それが2021年に新たに寄進された掲示板だったといえるのではないでしょうか。
掲示される法語については、浄土真宗あるいは仏教の言葉のみならず、哲学者や歌手など、職業やジャンルにこだわらず、住職の心に響いた先人の言葉が載せられていました。しかし、昨年の10月ごろに高山別院の三島多聞輪番から、「先輩方のお言葉をそのまま伝えることも大切だけど、自分(オリジナル)の言葉で伝えられるように考えなさい」と言われたことを機に、現在では、先人と住職自身の言葉を両方掲示するようになったといいます。
「坊守や家族と相談しながら、どのような表現を用いたら伝わるか、と共に考えることも、今は大切な時間として掲示板からいただいています」とのこと。
インターネットを利用した法要、法話の配信という時代に合わせた新しい取り組みもある中、寺報の作成や掲示板の活用など、昔からある文書伝道というものの力を感じさせられる取材となりました。
(岐阜高山教区通信員・小原宗成)
『真宗』2022年3月号「お寺の掲示板」より
ご紹介したお寺:岐阜高山教区高山二組(住職
窪田純)※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。