この土徳という言葉は、富山県の南砺地方一帯にある精神風土を表した、柳宗悦による造語とされています。

南砺では、何十世代にもわたって積み重ねられたお念仏の生活、あらゆるものにありがたいと感謝しあう人々の心が土地に染み込み、目に見えない力として人々を育んでいます。

土徳ははじめから在るものではなく、自然と過去と現代の人がともに作りあげてきた土地のあじわいといえます。

南砺地方は、井波や城端などの平野部と五箇山などの山間部をあわせもった地域です。平野部には、庄川と小矢部川に沿って、豊かな田園地帯に屋敷林に囲まれた7000戸を超える家が点在する「散居村」が広がっています。この屋敷林は「カイニョ」と呼ばれ、落ち葉や枝を毎日の生活に使用するだけでなく、冬の季節風や吹雪、夏の日差しなどから家や人々の暮らしを守り続けてきました。山間部の五箇山などには、厳しくも美しい自然を背景に、世界遺産の「合掌造り集落」があります。

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