色鮮やかな梅の花の欄間が、とても印象的な稱讃寺の本堂。この欄間は、ご門徒の皆さんと共に色を塗られたといいます。なぜご門徒さんと共に色付けしたのか、その経緯を住職の護山信麿さんと坊守の恵美子さんにお聞きしました。

梅の花の欄間が印象的な稱讃寺本堂

稱讃寺は、2005年の福岡県西方沖地震で、内陣にズレが生じました。また歴史の古い建物だったため、老朽化が進んでおり、雨漏りにより壁には染みも出ていました。門徒会会長を長年引き受けておられた(故)西嶋功さんは、その状況を誰よりも案じており、西嶋さんの「自分の目の黒いうちに内陣修復をしましょう」という強い思いによって、内陣修復を決断。更に、せっかく修復をするなら本堂全体もと、暗く入り難かった本堂を誰もが気軽に足を運べる明るい本堂に変えることにしました。修復時、御本尊の裏板から、稱讃寺は、225年前に建て替えられたことがわかったそうです。



ご門徒の皆さんと花の塗り替え

欄間に施されている梅の花は、立体的に組み合わせておりとても珍しく、修復にあたり信麿さんの提案で、ご門徒さんたちみんなで花に色を塗ることにしました。当初、恵美子さんは「一番目立つ欄間に色むらが出るのでは?」という不安があったようですが、信麿さんの「みんなで作ったという思いを大切にしたい。これも一つの相続のかたちであり、子どもたちが大人になったとき、ここが自分のお寺だという思いが強くなる」という気持ちに心を動かされたといいます。

塗り替えの協力を寺報で呼びかけ、2歳半から90歳過ぎまでの方々、約100名が集まり、みんなで塗った欄間の花は、一つとして同じ物のない花になり、プロの手によって組み合わせられ、見事に調和の取れた美しい欄間へと生まれ変わりました。1年かけて完成した本堂を見た西嶋さんは、涙を流して喜ばれたとのことでした。

薄暗かった本堂は、今では、いつでも灯りが灯され気楽にお参りができます。ご門徒ではない方々にもコミュニティーの場を提供し、足を運びやすい明るい本堂になっています。納骨堂へのお参りの際は、本堂でお参りをしてから納骨堂へ向かっていただく仕組みを作り、まずは本堂で手を合わせるということが習慣化されていました。

信麿さんは、お寺の在り方を考えていくうえで、ご門徒さんとのつながりを大切にされるほか、「お寺同士のコミュニケーションも必要」と言われます。「みんなの意見を聞きながら、ご門徒さんがお参りくださる環境を創造していければ」と語られました。これもまた、次の世代への相続に繋がるのだと思いました。


(九州教区通信員・本田 智子)


『真宗』2023年12月号「今月のお寺」より

ご紹介したお寺:九州教区福岡組 稱讃寺(住職 護山 信麿)※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。