桜舞い散る晴天のもと、4月14日(月)から18日(金)にかけて、「東京教区宗祖親鸞聖人御誕生八百五十年・立教開宗八百年慶讃法要」が真宗会館(東京都練馬区)にて厳修されました。このたびの慶讃法要では、親鸞聖人の御誕生・立教開宗を機縁として、「東京教区だからこそ」と言える新しい形を表現し、老いも若きもだれもが心躍る5日間としてお迎えしました。各日毎に小テーマが掲げられ(以下参照)、テーマのもとご法話やお勤めが行われ、また、真宗会館別館では『教行信証』(坂東本)パネル展が行われ、宗祖の自筆本にふれる機会が設けられ坂東本に手を入れ続けられた宗祖のご苦労が偲ばれました。

一日目は、はじめに武田 定光 氏(東京教区因速寺)による法話がありました。ご法話の中で武田氏は、「出遇いの慶びといいますが、真宗とどこで出遇っているのかと問い返される(反問性)」と述べられ、自己を見つめ直す機縁をいただきました。その後大谷 裕 新門の調声により、「Tokyoサンガ9」・「東京教区准堂衆会」・「真宗大谷派合唱連盟」の協力を得て、仏教讃歌による音楽法要が勤まりました。このたびの音楽法要は、東京教区で初めての試みとして、講堂形式である真宗会館でしかできない法要が模索されました。このように平座でできる法要の形が表現できたことは、教区にとって大事な一歩になったのではないでしょうか。そして、最後に唱和された「回向曲」はなじみのある人も多く、誰もが口ずさんでいる光景が印象的でした。

大谷裕新門による調声
武田定光氏によるご法話
音楽法要の様子


二日目は、大谷 裕 新門が執行者として帰敬式が行われ、その後、結柴 依子 氏(秋田県淨專寺)によるご法話がありました。仏弟子の一人としての新たな歩みである「名告り」ということを中心に語られた法話の後、スタッフと受式者による座談会が行われました。今回は「帰敬式受式にあたり、真宗の教えにふれてほしい。受式者同士、あるいは受式者とスタッフが交流できる場を持ちたい」といった星野暁主査の願いのもと、帰敬式前に「帰敬式法座」が実施され、事前に真宗会館にて結柴氏の法話を聞き、座談会で語り合いの場が設けられました。そのため、帰敬式はお互いに顔が知れる中で和やかに進行されました。受式者たちは「住職に背中を押されてようやく受式しました」「お寺と深いご縁があり、もっと仏教を学びたい」「お内仏と向き合って聞法したい」など、それぞれの思いを語っていただきました。

結柴依子氏によるご法話
大谷裕新門による剃刀の儀

三日目は今井 雅晴 氏(筑波大学名誉教授)によるご講話があり、歴史的観点から親鸞聖人の歩みを確かめつつ、人と人とが「凡夫(ただびと)として」出遇っていくことが願われた一日が始まりました。また、慶讃法要に向けて各組で三淘を中心とした門徒声明講習会が開催され、真宗会館講堂を活かした平座で門徒を中心とした「同朋共参勤行」(同朋として共にお参りする勤行)が勤まりました。その後、真宗本廟報恩講への参拝奨励のため、特別に「坂東曲」が披露され、その力強い声明と動きは多くの参拝者を魅了しました。

今井雅晴氏によるご講話
門徒を中心とした同朋共参勤行

坂東曲の様子

4月16日から18日にかけて、野外特設テントでは、教区有志による出店や能登復興支援のブースを設ける「慶讃市場」も開催され、さまざまな企画が行われました。草庵(親鸞聖人が関東時代に暮らしていた庵)をスタッフがイメージして手作りされた「慶讃の草庵」では、「法話講師との語らいの場」や「私の出会った大切な一言」など語り合いの場が開かれました。また、奥能登珠洲で被災された濤恵周さん・篠原暢さん(ともに大谷派住職)をお招きし、「能登の被災者からのお話」をしていただきました。被災時の様子や今の思いが語られ、多くの方々が静かに耳を傾ける光景は特に印象に残っています。何時失うかわからない人と人との「つながり」の大切さを教えていただきました。そして、教学研究所の難波教行さんをお招きし、『教行信証』(坂東本)パネル解説をしていただき、草庵スタッフによる「寸劇」(スタンツ)では、親鸞聖人と山伏弁円の出会いが表現され、その熱のこもった演技は人々の心を惹きつけていました。そこは多くの人びとで賑わい、ともに語り合い、笑顔が溢れる空間でした。

CAPIC(刑務所作業製品)
手作り念珠
輪島塗
インドカレー屋による出店
キッチンカーによる出店
たい焼きたこ焼きブース
坊主バーの様子
令和6年能登半島地震
写真展示
濤恵周さん・篠原暢さんによるお話
法話講師との語らいの場
稲垣和弘さんによる私の出会った大切な一言
草庵スタッフによる「寸劇」

四日目は小林 尚樹 氏(東京教区光明寺)によるご法話があり、初めに「あなたにとって法とは何か」という問いを立てられ、「バラバラで、なお、いっしょ」に生きていける本願の世界に学ぶ一日が始まりました。また坊守や若年者が中心となる「同朋共参勤行」が勤まり、普段あまり出仕する機会のない方々もおられる中、互いに着付けなど協力しながら出仕され法要後は出仕者の控室で自然と拍手が沸き起こったそうです。慶讃の夕べでは、鈴木 君代氏(東北教区念通寺)と天白真央氏(岡崎教区淨妙寺)によるライブが行われ、親鸞聖人の遺された「南無阿弥陀仏」の教えを音楽で表現されました。鈴木氏は東京教区慶讃法要のために、新曲を披露し、お二人の歌声は真宗会館のみならずYouTubeライブ配信の画面越しでも多くの方々の心に届いたのではないでしょうか。

小林尚樹氏によるご法話
坊守、寺族を中心とした同朋共参勤行

鈴木君代氏と天白真央氏によるライブ

最終日は本多弘之氏(東京教区本龍寺)による「祖徳讃嘆」(ご法話)があり、冒頭に次の言葉が紹介されました。

「前に生まれん者は後を導き、後に生まれん者は前を訪え。
連続無窮にして、願わくは休止せざらしめんと欲す。無辺の生死海を尽くさんが為の故なり」(安楽集)

慶讃法要期間中、度々耳にした言葉でもありますが、本多氏からあらためて先達方が大事にされてきた言葉であることを伝えていただきました。その後、結願法要は大谷裕新門御直修による、雅楽が入った伝統的法要で勤まりました。法要は円成しましたが、法要の結びは歩みの終わりではなく、法要を機縁として「ここから、いまから」一人ひとりの新たな歩みがはじまるのです。いまの時代を生きる私たちが教えを世界へ、そして未来へ伝えていくことが願われているのではないでしょうか。

本多弘之氏によるご法話
大谷裕新門による調声
木越渉宗務総長による挨拶
大谷裕新門による挨拶
結願法要の様子

(東京教区通信員 酒井大樹)