与板城城下町の面影を残す町並みと信濃川や緑地など自然に親しめる、歴史と自然が豊かな与板町広野にある照覺寺。 その本堂が、毎週日曜日・月曜日の朝七時から、私設図書館「ののさま文庫」となり、仏教、小説、絵本など幅広いジャンルの本が置かれる。
取材した日は「ののさま文庫」に加え、二つの移動書店も照覺寺の本堂と駐車場に出店。元気な挨拶があちらこちらから響き、子どもたちが宝物探しのように本を手にとる姿が見られ、「この本好き」とワクワクした弾んだ声が聞かれた。
「ののさま文庫」が始まったきっかけは新型コロナだった。このままでは寺に誰も入らず一年が終わってしまうという危機感があり、二〇二二年八月から、住職・清史さんの母・幸子さんが古本を買い集め、三段カラーボックスに詰め込んで提供する形から「ののさま文庫」は始まった。当初は開けていても一人も来ない日がほとんどだった。チラシを配ったり、インスタグラムを使ったり、地方雑誌の取材も受けたりした。地道に活動を続けて徐々に知られるようになり、今では小さなお子さんからご年配の方まで老若男女沢山の方で賑わっている。
「ののさま文庫」での体験を通じて、住職の清史さんは「寺」としての原点に立ち返ったという。 様々な媒体はあくまでツールであり、最後は「人」であると噛み締める。寺で開催したマルシェに来た方が、聞法会に来るかと言えばそうではない。一時の盛り上がりではなく、何度も足を運び、 何回もお話をしてお参りして、自分なりに納得したり、それを繰り返す中でお寺が身近になっていく。そのことを実感し、「どうしたら来てくれた人が居心地よく過ごせるか」を常に考えているという。
お寺をより身近に感じてもらうために、十月末から十一月半ばごろに行うおみがきは、図書館に足を運ばれる方にもお声がけしており、お内陣や仏具に触れる体験が喜ばれているという。
また今年から、お寺の空間を心に明かりを灯す活動の場にしてほしいという願いから、本堂の貸し出しを行う「照覺寺本堂ひろば ののさま照らす」を始めた。するとすぐに、図書館に通う方から「本堂で勉強を教えたい」と要望があり、「寺子屋るりあん」が始まった。さらに「お寺ってどんなことをしているのだろう?」と興味を持たれ、清史さんへのインタビューイベントなども開催されている。
いつでもそこにあり、いつでも迎え受け入れてくれる。そこへ行けば話を聞いてもらえる。そんな安心できる場所を直に感じ、人と人との温かな繋がりに触れさせていただいた。
(新潟教区通信員・本多真淑)
『真宗』2025年10月号「今月のお寺」より
ご紹介したお寺:照覺寺(住職:竹内 清史)
※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しております。































