ラジオ放送「東本願寺の時間」

里雄 康意/真宗大谷派宗務総長
『総長インタビュー』音声を聞く
志田
おはようございます。
総長
おはようございます。
志田
さて、里雄総長、この番組『東本願寺の時間』は、民間放送開始直後に第一回が放送されてから、あしかけ65年の使命を終えてまもなく終了するのですが、総長の今のお気持ちは、いかがでしょうか。
総長
あしかけ65年という半世紀以上の長い間、続けてきたものだという感慨と、これも偏にいつもたのしみに聞いてくださるみなさまのおかげであったなという感謝と、今ここにラジオを通して東本願寺がみ仏のみ教え、親鸞聖人のみ教えを伝えてきた歩みが終わるのかという一抹の寂しさを感じております。
志田
そうですね。残念ではありますが、また未来へむけて、別の形で羽ばたいていきたいですね。
総長
はい。今後宗派としましては、引き続き、いろいろなかたちで、世代を超えて多くの方々へ法話の配信を考えています。
志田
ところで、総長は毎週お聞きになっていましたか?
総長
残念ながら毎週は聞けなかったですが、私が聞く局は日曜日の早朝から放送が始まりますので、目が覚めた時や夏の暁天講座に出講するときなどは聞いていました。
志田
そうですか。この番組がはじまった1951年はおいくつでしたでしょう?
総長
私は1949年生まれですから、2歳でした。
志田
そうですか。どのような時代だったのでしょう。
総長
まだ物が豊富にありませんでしたので、着るものは姉のおさがりを母親が男の子用につくりなおしてくれたものを着たりしていました。また、食べ物も畑でとれたきゅうりやトマト、そら豆の炒ったものをおやつ代わりに食べていたことを思い出します。ラジオは「三つの歌」を楽しみに聞いていました。
志田
ラジオが人々とともにあり、日本が高度成長にむかってつきすすんでいった時代でもあったわけですね。このあしかけ65年のなかで、真宗大谷派ではどんなことがありましたか?
総長
はい。1961年、私が12歳のとき親鸞聖人七百回御遠忌法要が勤まり、その翌年、純粋なる信仰運動としての「真宗同朋会運動」が始まり、その流れのなかで1998年蓮如上人五百回御遠忌法要、2011年には、宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌法要が勤まりました。そして、御遠忌特別記念事業として、御影堂、阿弥陀堂、御影堂門の修復を行ってきました。
志田
なるほど、いろいろなことがありましたね。この番組でも真宗大谷派の行事にあわせてさまざまな企画がされてきましたね。
総長
はい、先ほど言いました同朋会運動のテキスト「観無量寿経・序文」、真宗門徒が親しんでいる「正信偈」「歎異抄」の法話、親鸞聖人や蓮如上人のお話、御遠忌が近づいた時には、御遠忌テーマに沿ってのお話。時には、仏典童話など、みなさまの琴線に触れるものをと企画をいたしました。
志田
ところで総長、この番組にはじめて出演されたときのことは覚えていらっしゃいますか?
総長
はい、よく覚えています。初めてのラジオへの出演でしたので、異常に緊張し喉がカラカラになったことを思い出します。スタッフのみなさんに大変心配をおかけいたしましたが、志田さんが緊張をほぐしてくださったことは決して忘れていません。
志田
いえいえ、おそれいります。戦後まもなくの時期から現在まで、真宗大谷派、東本願寺とみなさまとをつなぐ役割をこの番組が果たしてきましたね。
総長
はい。宗教教団の使命は一人でも多くの方に正しくみ教えを伝え、手渡していくことであります。ラジオを通して教団という枠を超え、浄土真宗の教えを正しく伝えていくことです。ラジオを通して、人と人とが出会い、心とこころの通い合いが生まれることに喜びを感じていました。
志田
ラジオ放送が大きな役割をはたしてきたのですね。
総長
私のまわりにおられる方々のなかにも、朝早く目が覚めたとき、枕もとにもっておられる携帯ラジオを聞かれています。また農作業のときにラジオを流しておられる方々もおられます。
そのようにラジオを友としておられる方々にどこからともなく、自然に胸を揺さぶるような言葉がラジオから耳に飛び込んでくる。そんな一言との出会いをプレゼントできる機会は貴重であったなとおもっています。また今後そのような機会あれば活用したいとも思います。
志田
はい。ではここで、今後のことなど、お話しいただけますか。
総長
はい。今後は、真宗大谷派ポータルサイト上の「浄土真宗ドットインフォ」におきまして法話を動画にてインターネットで流してまいります。
志田
はい。みなさまぜひ、聞いていただきたいと思います。1951年にラジオの民間放送が始まったときもそうでしたが、常に時代に応じた方法で、親鸞聖人のみ教えを伝えてゆかれるのですね。
総長
そうです。若い世代の方々にも仏教や浄土真宗の教えが簡単に伝わる手立てを時代と共に模索していきたいと思います。いつでも、どこでも、誰でもが浄土真宗の教えを聞けることが大切ですので。
志田
はい。では、最後にラジオをお聞きのみなさんにお伝えになりたいことはありますか?
総長
いつも「東本願寺の時間」をお聞きいただき有難うございました。こうしてあしかけ65年の長きに亘り放送ができましたのも偏に放送を楽しみに待って聞いてくださる皆さまのおかげであり、真宗の教えを一人でも多くの方に伝えてくださいと願って番組提供を下さったスポンサーの皆さまのお力添え、また浄土真宗の教えを、ラジオを通して伝えてくださった先生方の御法話の魅力、そして、番組制作に携わってくださったスタッフの皆さんの熱意。多くの方のおかげでありました。心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
志田
ありがとうございました。