他力の回向
- 【原文】
必 至 無 量 光 明 土
諸 有 衆 生 皆 普 化
【読み方】
必ず無量 土に至れば、光明
諸 の有 、みなあまねく衆生 すといえり。化 - 【原文】
親鸞聖人は、中国の
曇鸞大師は、まず「
私たちは、真実を見失っているために道理に惑い、そのために、心が汚染されています。このような惑染の私たちにも、
私たちに信心が起これば、私たちは、迷いの状態(
迷いから解放されるということは、往生するということですから、迷い続けている惑染の凡夫に、本願による信心が起こるならば、その迷いのままに浄土に往生させていただくことが確信できる、と教えておられるわけです。
惑染の凡夫が、阿弥陀仏の願いによって、間違いなく、浄土に往生するわけですが、そのことを「必ず無量光明土に至れば」(
「無量光明土」は、限りのない光が輝いている国土、つまり阿弥陀仏の極楽浄土のことです。阿弥陀仏が仏に成られる前、法蔵という名の菩薩であられましたが、その法蔵菩薩は、四十八の願いと誓いをお立てになりました。その第十二の願が「光明無量の願」と呼ばれているのです。
『
法蔵菩薩は、仏に成ろうとしておられましたが、たとい仏に成られるとしても、その浄土の光明の輝きに限りがあって、途方もなく多数の仏さまがたの国々をすべて照らさないのであれば、自分は仏には成らない、という誓いを立てられたのでした。
そしてその誓いが実り、願いが報いられたので、法蔵菩薩は阿弥陀仏に成られたのでした。このために、阿弥陀仏の浄土は「無量光明土」と呼ばれるのです。
さて、「必ず無量光明土に至れば、諸有の衆生、みなあまねく化すといえり」(必至無量光明土
惑染の凡夫が、阿弥陀仏の本願によって、無量光明土、すなわち阿弥陀仏の浄土への往生を果たすならば、やはり阿弥陀仏の本願によって、迷いの世間に立ち戻り、あらゆる人びとを教化することになると、曇鸞大師は教えておられるのです。
先ほど見ましたように、阿弥陀仏の本願によって、惑染の凡夫に信心が起これば、迷いの状態のままに浄土に往生することが確実となる、ということが教えられていました。そして、すでに「
凡夫が往生するのは
今の、惑染の凡夫に信心が起これば、迷いのままに浄土に往生するというのは、阿弥陀仏の往相の回向に由ることです。そして、無量光明土に至った人が、世間に戻ってあらゆる人びとを
曇鸞大師はこのようなことを私たちに教えてくださっていると、親鸞聖人は曇鸞大師を讃えておられるのです。
大谷大学名誉教授・九州大谷短期大学名誉学長 古田 和弘