ご門徒とのつながり
(高間 重光 教学研究所所員)
先日、あるご門徒のお家で、ご両親の十七回忌と二十三回忌のご法事をお勤めさせていただきました。施主ご夫婦の兄弟の方々や、子供さんたちの家族の方々など二十名近くの方がお参りしておられました。
そのご門徒とのご縁は、亡くなられたご両親がふたりで支え合いながら晩年を暮らしておられた頃から始まりました。いつも丁寧に玄関の外まで見送ってくださったお姿がなつかしく思い出されます。ご法事の途中の休憩時間、お勤めが終わってからのひと時、いろんな話題に話がはずみました。
私が「お母さんはお体が弱くて、献身的に家事をこなして下さるお父さんにいつも感謝しておられましたね。」と申し上げると、「ああ見えて、おふくろは親父に意外ときつかったんですよ。」という答えが返ってきたり。久しぶりにお会いした、青森県に移り住んでおられる妹さんとは、「向こうでの生活はどうですか。今度の震災での被害はどうでしたか。」といったやり取りになりました。幼児を連れてお参りに来ておられる娘さんとの話題は、自然とそのお子さんのことになります。最近にお会いした方もおられますが、何年ぶりかの方もおられます。それぞれ、なつかしく、温かい会話をさせていただきました。
しばらくの時間ではありましたが、そのようなやり取りの会話の中で、お互いが自分の近況を報告し合って、相手の今を確かめ合って安心するというようなひと時になったことです。ご法事を終えて帰るとき、五六人の方が次の再会を楽しみにするかのように、門の外まで見送ってくださいました。私は、何とも言えず有り難く、住職・僧侶冥利につきると感じたことです。
数年前のことですが、同朋会館で、住職の後継者の方に引率された奉仕団のお世話を担当したことがあります。参加者同士が仲良く、その若い引率者の方を中心に,とてもまとまりのある団体でした。その方からお話をお聞きしますと、坊守さんはすでに亡くなっておられて、それ以来、住職とその方との男二人のお寺での生活を、日常の生活面も含めていろんな面でご門徒が支えて下さってここまで歩んで来ることができた、ということでした。その方は、「私は、お寺の私たちも含めて、ご門徒のみなさん全体が家族だと思っています。」ともおっしゃいました。
実際にその方からは、その言葉通り、ご門徒への感謝の気持ちと、その方々を家族と受け止めておられる温かさとを感じ取ることができました。
今、門徒の寺離れということが言われ、仏教界全体の危機感を訴える声もよく聞くようになりました。けれども私たち僧侶は、常日頃どのように寺に身を置き、どのような姿勢でご門徒と出会っているのでしょうか。親鸞聖人が「御同朋、御同行」と言われているその内実が、私たち僧侶とご門徒との交わりにおいて、改めて問われているように思うのです。
(『ともしび』2011年8月号掲載)
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