２００３（平成１５）年 真宗の生活 ２月 【生老病死】
＜誕生＞
二人目の子の誕生に立ち会いながら、人の生死について考える。
昔、アルバイトでうなぎを焼いたことがあります。特大と並のうなぎ、仕入れ値は、実は、特大の方が安いのです。大きさが揃わないと商売がしにくいからです。人間の思いの枠を外れているもの、つまり「規格外」のものは、「困ったもの」なのです。
いのちを規格化することが、どれほど無理なことかは、少し考えれば気づくことです。なのに、さまざまな技術の発達などから、すでに私たちは、人間の思惑で、いのちなど何とでもできると思っているかのように見えます。
とはいえ、現代人が、いのちを思惑通りにできると確信しているとも思えません。そうならば、子を生み育むことを望む人がもっと増えてもおかしくはないからです。現実は、少子化対策が叫ばれています。
「世人、…愚痴蒙昧にして自ら智慧ありと以うて、生じて従来するところ、死して趣向するところを知らず」（『仏説無量寿経』・聖典74頁）
私たちは、生死が、自分の思惑を超えていることに気がついています。でも、この厳然たる事実を、きちんと見つめられません。物事を思惑に従えることに慣れた現代人は、手に負えぬものは持て余し、思議が及ばぬ対象には、不安を抱いて生きています。生死をめぐる現象には、いのちの不思議を受けとめられない、現代人の心模様が映し出されています。
『真宗の生活 ２００３年 ２月』【生老病死】「誕生」
