8月4日に、東京の真宗会館(東京都練馬区)で、戦争犠牲者追悼法要が厳修されます。
この法要は、東京教区東京2組 林光寺前住職の久萬壽 俊雄さんが発起人となり、毎年50人以上のご門徒が参拝される中で、30年以上に亘って教区の有志の方々によって厳修されてきました。
今回は、今年の法要厳修に際し、「戦争犠牲者追悼法要」実行委員会の代表を務めておられます久萬壽 俊雄さんと、実行委員会の庶務として運営を支えておられます東京4組正應寺住職の佐々木 誠正さんにご寄稿をいただきました。
【久萬壽 俊雄さんからのメッセージ】
追悼法要の取り組みに至った経緯(法要として厳修することの願い)
法要の厳修を思い立った当時(1981年)、反戦平和運動で、他の運動団体ではデモ行進や靖国神社問題などの集会を行うことが一般的ですが、真宗大谷派で行う場合は、真宗門徒の信心の問題として取り組むということで、追悼法要の形で行うのが最も適しているのではないか、またそういう形式でしか出来ないのではないかという意見から、数人の教区人が発起人となって厳修されることになりました。
法要として厳修することにより、一般のご門徒さんも参詣し易く、特に発足当初は身近な方を先の戦争で亡くされた遺族の方々が熱心に足を運んで下さることができましたし、厳粛にお荘厳することは、それだけで大きな意味があります。
第1回の法要は、当時の教区教化事業に中心的に携わる殆どの方々のご協賛をいただき、大変盛大な法要となりました。
当時、東京教区では浅草の東京別院離脱問題を抱えており、別院の使用が出来なかったため、坂東報恩寺(東京都台東区東上野)を会場に、和田稠先生をお迎えして「戦争犠牲者に応える道」を講題にお話しいただきました。
第1回より、和田稠先生の靖国神社問題の取り組みを中心課題に据えて務められてきましたが、その学びの姿勢は、現在にいたるまで受け継がれ、内容を深めていくために、戦争体験を語っていただいたり、戦争や平和に関する講談やビデオ上映を行ったりと、その都度工夫を重ねてきました。
また、ご講師についても、大谷大学を始め、大谷派の学事施設の教授や講師、宗派内の平和運動に関わる住職、またはユニセフなどの外部の方など、あらゆる関係性を頼ってご依頼をしております。
運営の体制について
運営は、私(久萬壽 俊雄さん)が代表となって実行委員会を立ち上げ、発足当初の教区教化委員会の繫がりで事務局を立ち上げました。
これまでの間に、教区教化委員会の事業としてはどうかというご意見が寄せられたこともありましたが、教区有志の自主性を重んじるため、現在まで、教区有志の方々で実行委員会を組織して厳修し続けてきました。
そして、この取り組みの趣旨にご賛同いただけるよう、教区内のご寺院へ「ご協賛のお願い」を発送しており、ありがたいことに、毎年100ヵ寺ほどのご寺院から協賛志をいただいております。
ただ、近年では、この取り組みを受け継いでくださる後継者の育成が大きな課題となっておりますが、法要当日にできるだけ多くの若手の方々にご協力いただけるようお願いをしております。
若手の住職や副住職に直接にご案内をいたしておりますので、少しずつ若い方も増えてはきましたが、これからも継続的に考えていかなければならない課題です。
今後の課題
また「戦争犠牲者」とは、軍人、民間人併せて310万人を失った日本国内だけでなく、日本兵に殺された方々や、戦争によって命を失わなくても人生全体が大きく狂わされ傷ついた人々、戦争のために困窮している人々までを含めて受けとめられるべきだと考えております。
つまり、この法要を厳修することの趣旨は、そういった戦争による悲しみに深く痛み悼むという意味なので、沢山の方々にこの法要の趣旨をご理解いただき、共感いただきたいと考えておりますが、なかなか容易ではありません。
特に、現在の日本の方向が大きな揺らぎにある時、日本が海外の戦争や紛争に関わることは、若い人々、幼い人々にとっては、やがて自分の一生や生命にとって切実な生存の問題になる筈です。
もし、それらの人々に、戦争の問題を仏教徒は、真宗門徒はどう応えるのかと問われたときに、明確にどう応えられるかという問題があり、課題は山積していると痛感しております。
その意味では、宗会の非戦決議や宗務総長の声明は、特に重要でした。非戦・反戦が宗門全体の取り組みであると声明されたことは、最もこの運動を純粋化することになると思いますので、大変に感謝しております。
【佐々木 誠正さんからのメッセージ】
私は、1981年の第1回法要からスタッフとして参画し、第13回(1993年)からは、法要の企画段階から全てに関わってきました。
発足当初は、久萬壽さんをはじめとして、戦争を経験された方が実行委員会にも大勢おられ、戦争の体験を伝えてくださいました。
ただ、現在では、お参りにこられるご門徒についても戦争を体験された方は少なくなってきましたし、実行委員会についても久萬壽さんお一人だけとなっています。
太平洋戦争から時間を経るほどに、戦争を知っておられる方がおられなくなっていくことは致し方のないことではありますが、その方々の声を次の世代にも伝えていかなければならないと思っています。その意味でも、次代を担ってくださる若手の方々に参画いただくことは、大変重要なことです。
また、真宗会館にも全面的に協力をいただいております。
東京教務所や東京宗務出張所の所長や次長も出仕してくださいますし、所員の方々もお参りくださっています。
教区の先輩方がご苦労をされて30年以上に亘って紡いでこられた伝統と、これまでにご出講くださいました先生方にお話しいただいた悲しみを受け継ぎ、次世代へと伝えていく御仏事として、ご縁をいただいてまいりたいと思っております。
以上
【法要のご案内】
今年も、8月4日に東京の真宗会館で法要が厳修されます。
1945年3月10日、太平洋戦争による空爆(東京大空襲)で、東京も一面の焼野原になりました。
それから70年を経た今、私たちが生きる社会は、先達が経験された痛みや悲しみを受けとめ、そこに託された願いに応答するものとなっているのか、私たちの歩みを問う御仏事が厳修されます。
是非とも「戦争犠牲者追悼法要」にお参りくださいますようご案内申し上げます。