2015年4月、京都市左京区にある岡崎別院では、地域の商店や自治会などとの協力のもと、「親鸞ウィーク」と題した大規模な事業が実施されました。
岡崎別院や崇敬地域の寺院、周辺のご門徒は、地域の方々に宗史蹟である岡崎別院へ親しみを持っていただき、地域に開かれた別院を形づくりたいと願ってこられました。そして、その願いを形とするために、地域の商店や自治会に加え教区仏教青年会などとも協力し、岡崎別院を会場としたコラボレーション企画を実施することになったそうです。
今回は、岡崎別院の歴史や現状を踏まえ、今回の取り組みに至った経緯や今後の展望を、岡崎別院の福田 大(ふくだ まさる)輪番にご寄稿いただきました。
【岡崎別院の歴史的経緯】
『親鸞聖人正統伝』は、親鸞聖人が29歳で比叡山を降り、岡崎の草庵より吉水の法然上人のもとに通ったと伝えています。また承元の法難に連座して越後に流罪になり、赦免ののち関東での生活を経て帰洛し、最初に住まわれたのも、岡崎の草庵であったと言われています。
当時の京都近郊の人々が、聖人を慕って「親鸞屋敷」と読んだ草庵跡と伝えられるこの地に、享和元(1801)年に東本願寺第20代達如上人(1780~1865)と御門徒によって現在の本堂が創建されました。
明治9(1876)年に「岡崎別院」と改められ、同22(1889)年には新門の学問所である御学館が移築され、「清池館」(現在の輪番所)と命名された御学館では、彰如上人(俳名は句仏上人)が学ばれ、同24(1891)年には清澤満之先生が主任に任ぜられました。
また大正5(1916)年には金子大栄先生を中心に学生の学習会である「鏡池会」が、当院を会場として発足しました。
その後、昭和41年2月、不慮の火災で、御殿・書院を焼失したことにより、昭和42年1月、近郊寺院と御門徒により復興奉賛会が結成され、多大なるご尽力により昭和43年に御殿・書院が再建されました。引き続き、昭和46年10月に「宗祖親鸞聖人700回御遠忌法要」が厳修され、昭和49年6月には「宗祖親鸞聖人誕生800年慶讃法要」が厳修されました。
【岡崎別院の教化活動と運営状況】
20年前迄は、京都での社葬の多くは別院で行われていました。京都の政財界や著名人の葬儀の多くは別院で行われ、岡崎別院での葬儀が京都人のステイタスでもありました。
しかしながら、葬儀各社の会館建設に伴い社葬が激減した昨今では、殆ど行われることもなく、社葬の激減に比例し10年程前より、別院の会計事情も非常に苦しくなってきました。
そういった当院の運営状況により、真宗大谷派宗務所はもとより「岡崎別院奉賛会」と称し、山城第1組・第2第組の寺院とご門徒、その他多数の有縁の皆様方のご協力を賜り、「三日講」(正信偈の会・宗祖のご生涯に学ぶ会・定例法話)・「朝の法話」(暁天講座)・「蓮華の集い」(お寺で聞く子育てのお話会)・「子ども会」「花まつり」などの教化活動とともに、境内整備を進められています。
【熱き護持意識に支えられ】
2008年10月の輪番着任時は、庭園の樹木が生い茂っていることへの近隣住民からの苦情も寄せられ、本堂・庫裏の雨漏りなど問題が山積していました。いわゆる、緊急整備箇所が多いにもかかわらず、資金不足により整備ができないという状態でした。
そのような状況のなか、岡崎別院奉賛会からの助成を円滑にするための規約作りが始まり、会長・副会長・会計・監査に山城第1組・第2組の寺院住職が歴任していただくことにより、スムーズに整備に着手させていただくことができました。
また、山城第1組・第2組の寺院住職のみならず、京都教区仏青・教区の御門徒の方々にも、庭園の清掃奉仕を行っていただいています。そして清掃奉仕の後には、庭園にてバーベキューを囲んで皆様方と親睦を図り、これからの別院のあり方や、庭園の利用方法を共に熱く語ることも恒例となっています。
皆さん方との語らいのなかで常に課題となることは、「岡崎別院の周知度の低さ」であった。タクシーに乗って「岡崎別院までとお願いしても、知られてない現状をどのようにすればいいだろうか?」ということでした。
岡崎地区に周知されるには、町内自治会に入り奉仕活動、自治活動に積極的に参加し岡崎地区の方々との関係性を持つことが第一であると考え、町内自治会(岡崎地区)の活動に参加させていただくことになりました。
また、今回は山城第1組・第2組の寺院住職が「岡崎別院門徒横町実行委員会」を立ち上げられ、さらなる岡崎別院の周知の為に岡崎地区の飲食店組合で構成されている「colors」を中心として、「岡崎ワールドミュージックの街づくり実行委員会」との連携による行事を企画しました。
それは、「オカザキ・プレイ」(音楽祭)をはじめとして、「寺慢展」(京都教区の寺院出品による寺宝展)・「戦争展」(戦争の悲惨さを若い世代にも知ってもらうための説明付写真展示)などを行い、最終日には真宗大谷派宗務所協賛「宗史蹟公開講演会」(法然上人と親鸞聖人の出遇いのルーツをたずねて)という内容で実施し、これら一連の催しを「親鸞ウイーク」と称して、一週間にわたり、京都教区・山城第1組・第2組・ご門徒のご協力のもと開催されるに至りました。
今後は、報恩講を主として、春には「親鸞ウイーク」、夏には「朝の法話」(暁天講座)、秋には「庭園ライトアップ」の諸行事を近郊寺院・ご門徒のご協力を賜りながら進めて行きたいと考えています。
また、岡崎地区に根付いた、敷居の低い、どなたにも気軽に来ていただける別院として、有縁の大勢の皆様方のご支援・ご協力を賜りながら、さらなる充実した教化活動に取り組んでいく予定です。