【身近なテーマで多彩な講師】
「ほっこり法話カフェ」は、岡崎教区第31組の蓮福寺さん(静岡県掛川市)で行われている、さまざまなテーマのお話を聞く、地域の人々の温かな団欒空間です。お寺が地域と一体となって場を開き、地域の皆さんが安心して生きていくことをめざしています。ことの発端は、蓮福寺のご住職、馨 敏郎さんと地域の町内会副会長の鈴木 敏一さんとの掃き掃除をしながらの立ち話にあります。
鈴木さん:「老人会で何かできないかなぁ?」
馨 さん:「…。」
鈴木さん:「考えてみれば、お寺さんとの対話といったら、お葬式かご法事の時ばかり。それでもゆっくりと話す機会がないよね…。」
馨 さん:「もう少し対話の場があるといいですね。」
鈴木さん:「一般家庭とお寺さんとの対話は、やっぱり大事だからねぇ。」
馨 さん:「やりましょうか。」
鈴木さん:「しかし、説法ばかりじゃ堅苦しいし、参加者が飽きてしまうのでねぇ。」
試行錯誤を繰り返し、一歩一歩、進めてこられたようですが、3月9日の開催で28回目を迎え、振り返ってみると実にさまざまな講師陣!!
浄土真宗の寺院で、こんなに色んな宗教家が話しているのは、なかなか目にすることはできません。お寺であるのに、神父さんや牧師さんも登場されています。臨済宗や曹洞宗の住職さんにも話してもらうのですが、建築士、医師、教育長、農業従事者、ケアマネージャーさん、詩人などさまざまな講師がカフェを温めてこられました。
鈴木さんによると、講師選定にあたって気を付けていることは、地域の高齢者が身近に感じる課題をとりあげることと、どのようなお話を聞きたいかの要望を丁寧に聞いていくことだそうです。
特に、医療や介護のお話をしてもらった時からカフェが広がりをもったそうです。出張カフェで終末現場で活動するチャプレンさんにもお話を聞いてみたいとの声も上がっています。参加者人数は右上がり。知らないだけで見たら来たいと口コミで増えているようです。
【3分間で仏教アピール!】
そうこうするうちに、仏教のおはなしも聞きたいという声が上がり、一般的なテーマと仏教のお話を両立させるような形にしようということで、ティータイム中に「3分間法話」も盛り込まれています。法話者を指名するのは鈴木さん。僧侶は自分の体験や仏教のイロハなど限られた時間でお伝えしています。
【開催形態は?】
主催は法話カフェクラブ。地域の仏教会がこの活動に積極的に協力・参加されています。世話人は住職方に賛同した地域の人たち、さまざまな有志の寺院の協力で成立しています。
カフェの基本は、30分のご法話と30分のティータイム。毎月、第1または第2月曜日に蓮福寺本堂にて開催されています。参会費は1,000円。1,500円で始めたのですが、「少し高い!」との声から減額されたとのことです。1人600円のスイーツとコーヒーを40人分喫茶店にお願いしているそうで、講師礼はどなたにお願いしても5,000円。さらに有名な講師も呼びたいねと皆さん盛り上がっています。
【地域の仏教会も全面的に協力!】
地域の仏教会事務局である戸田大作さんにお話を伺いました。
「そもそも、違う宗派のお寺さんには、会う必要も交流する必要もありませんでした。自分たちの世界だけで活動をしていましたが、このご縁のおかげで新しい可能性が広がっていく予感がします。可能性をお寺から見せていかなくてはならない時代なんでしょう」
と。他の宗派の取り組みについての情報交換もなされて活気が生まれています。宗派の枠を超えた共同教化が地域にもたらす影響は計り知れません。
臨済宗妙心寺派の藤澤無学さんは、
「お寺は信頼されています。その気持ちに応えなくてはならないんです。人のつながりを積極的に作っていくと視野が広がり、人が人を呼んでくるんです」と、英語教室や座禅の会、ジャズコンサートなど、お寺におけるさまざまな取り組みを紹介していただきました。「仏教は人。ヤル気のある人に人がついてきて、それが連鎖する」。
組織作りから活動の支援まで、分散して存在する知識やノウハウを使ったコミュニティデザインが実践されていると感じました。
様々な人が集まりたくさんのアイディアが生まれています。とくに、子どもたちと老人の交流会(そば作り、切り干しいも作り、その他の農業体験)においては、子どものためとやっていましたが、高齢者が生き生きしているとのことです。お寺でやらせてくださいと地域の人たちから声がかかるようになるほどの変化が生まれているそうです。
【様々な悩み相談を受けていく、広いネットワークを目指して!】
「近いお寺だから逆に相談できないこともあります。心の病を抱えている方や、自死をされた方のご遺族、お子さんを幼少で亡くされたご遺族は、遠方から来られることがあります」
「単純なことが聞きたくても近くだったら聞きにくいこともある。そのような方々のために、できるだけ広いネットワークで相談を受けていかなくてはならないですね」
最後に、
「まだまだ、やれることがありそうですね」
と皆さんから。
馨住職に寄せられる期待は大きいものがあります。今後は、さらにお寺が親しみ深い場所に変わっていってほしいという願いからいくつかのお寺を巡回する出張カフェもやっていければとのことです。