伝道掲示板
「忙しい」と言っているときは、
なまけている証拠だ
(安田理深)
「掲示板の言葉は自己表現の場だと思っていて、こころに引っかかった言葉を載せるようにしているかな。やはり和讃などの聖教の言葉はいいね。自分で思いついた言葉はあまり残らないね」と語るのは、長崎教区第3組西教寺住職の田中顕昭さん。
お寺のすぐ側には、かつて「キリシタン大名」と呼ばれた大村藩の領主、大村純忠終焉の地があります。大村藩の寺院の多くは切支丹(キリシタン)禁教令と宗門改のために建てられました。ここ西教寺もその寺院の一つです。
明治期に建てられた本堂が老朽化したため、2007年に新しい本堂が建立されるとともに住職に就任されました。まだ1年半の新人住職です。
「大村という場所は住みやすく良いところ。しかし、そのぶん、のんびりした気質がある。でも良い風に言えば、おおらかというのかな」と語られていました。
「チャンスはピンチの顔をしてやってくる」(ビル・ポーター)。掲示板の言葉は、生まれながら脳性まひの障害をもって生まれたビル・ポーターという人が、障害を抱えながらもアメリカでトップセールスマンになるという話をテレビで見ていたときに、彼がいった言葉だそうです。「障害を抱えている人が語るからいいと思うのかもしれないけれど、人間は窮地に立たされた時、それをどう乗り越えたらいいかってそれぞれ考えるでしょ。だから、そこに答えを持ち込むのではなく、言葉が投げ出せたらいいんじゃないかと思って書いた」とのことです。
掲示板自体の反応はどうか、住職にお聞きしたところ、以前、親子二人で来て、掲示板の前で熱心に言葉を書き留めていたことがあったそうです。そこで、その二人に何を熱心に書いているのかと尋ねると、「とてもいい言葉なので、書き留めて学校の先生に見せてあげようと思っています」と言われたそうです。
今までに掲示板で好評だったのは、「忙しい」と言っているときは、なまけている証拠だ」という、安田理深先生の言葉だそうです。住職は、いろいろな人に意味を尋ねられ、ある人は何度考えても解らないので、わざわざ庫裏まで尋ねてきた人もいたそうです。
掲示板の言葉は、理解しようとすると言葉に突き放される。そんな言葉がかえっていいのかもしれない。今回の取材をとおして思いました。
(長崎教区通信員 亀井 攝)
『真宗』2009年5月号「お寺の掲示板」より
ご紹介したお寺:長崎教区第3組西教寺(住職 田中 顕昭)
※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。