本年5月31日、賢誓寺では、「木もれ陽街道」完成式典が開かれていた。お寺の前の道が綺麗に舗装されたのである。そこには住職の江馬雅人氏と、後継者である雅臣氏がおられた。雅臣氏は高山教区若手寺族のリーダー的存在である。
雅臣氏が自坊で活動を始めたのは2006年10月のこと。高山教区益田組が「第1回真宗子ども講座」の指定組になったことをきっかけに、その勢いだけで子ども会を始めたのだそうだ。
「今日は子どもたち来てくれるかなぁ」。
ただ「おはよう!」とお寺の階段を駆け上がってくる子どもたちの声がうれしかったという。
「はじめは、”寺で一緒に学ぼう”とか”ほとけ様の教えをみんなで聞いてゆこう”とか、何か僕が子どもを教化するんだっちゅう意識があったけども、実はそうじゃない。僕が子どもたちに教えられていくんだなと思うようになった」。
子ども会を始めてから3年。今は「教え1、行儀3、遊び6」というバランスを保ちながら子どもたちと一緒になってはしゃいでいる。
はじめに関わった子どもたちの中には中学生になる子もいて、部活や塾で子ども会には参加できなくなってきた。
「中高生になった子どもたちとも僕はずっと出遇い続けていきたい」。
今年4月、中学生以上で集まる「賢誓寺仏教青年会」を起ち上げ歩み出した。声をかけた25人の中高生の友達と、お寺で3度にわたりちょっとまじめな語り合い…。そして9月19日、雅臣氏念願の「賢誓寺仏教青年会中高生奉仕団」が真宗本廟同朋会館の門をくぐったのである。
「この子らとここに来たっていうことだけで感動して涙がでた」。
奉仕団日程中は、みんなで、恋愛の話や、友達との関係性の話、家族の話など「ぶっちゃけトーク」をしたと雅臣氏は喜んで話す。
子どもたちを小さな念仏者として出遇い続ける。教区の青少年委員、東海連区の児童教化にも積極的に関わる中で、歯がゆさもにじませる。
「あなたたちは何をしてるんですか? 自坊で子ども会を始める気がないんですか? ああだこうだ言う前にやらなきゃ始まりませんよ。やってみて初めて感じることがある。そこのところで僕はみんなと語りたい。お互いに刺激しあって、そしてまたみんなとも出遇っていきたい。それが共同教化なんじゃないですか」。
住職と共に、お寺のあり方を問い続ける雅臣氏。お寺の姿は、立派な建造物のことではなく、こんながむしゃらな男が走っている姿に表れるのではないかと思う。
「木もれ陽街道」は、お寺に遊びに行く子どもたちで溢れるだろう。そしてその子の子どもたちも…。
今日もまた、この「熱い男」によって、高山教区若手寺族は「共同教化」の渦に巻き込まれてゆく。
(高山教区通信員 三島大遵)
『真宗 2009年(12月)』
「今月のお寺」高山教区益田組賢誓寺
※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。
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