自然豊かな岡崎教区 第27組 願永寺
2017年2月23日(木)朝8時、門徒だけで報恩講の仏花を立てるお講「松華講」のみなさんが集合しました。
いつもは6人のメンバーですが今日は5人。車に花材を載せてお寺に集合。
報恩講志をお供えし、ご本尊に向かって合掌。
パパッとブルーシートを広げ、花瓶にこみわらをします。
段取りがいつも決まっているので、言葉を交わすこともなく進められていきました。
ここで、住職さん・坊守さんがご挨拶にこられ、一服。温かいコーヒーをよばれながら少々打合せ。
本日は、松華講のみなさんに仏花を立てていただきながら、仏花を立てるようになったきっかけ、いつも心掛けていること・・・などお話を聞いてみました!
【松華講のメンバー】
城殿俊一郎さん、林和義、大山欽也さん、大河原和也さん、高橋鎮さん
【城殿 俊一郎さん】(きどのしゅんいちろう)80才 経歴約50年
・敎恩寺の立華を平松氏と柴田氏が行っていた。如意寺の住職の「お前もやってみろ」という勧めで携わることとなった。
・はじめは何にもできないから、「持ってきてくれ」というものをもってきたり、掃除ばかりしていた。やっぱりいきなり何もできん。
・今みたいに花の立て方が書いてあるテキストや写真がどこにでもある時代ではなかったので、細かいことを一つ一つ教えてもらうというよりか、立てるところを見て、やってみて、分からないところを聞く、先輩に指導してもらうということを繰り返してだんだんと身に付いてきた。
・立てる時には、お寺の要望とお荘厳のバランスを考えて立てている。
【林 和義さん】(はやしかずよし)88才 経歴28年
・無事定年になり、何か世のために尽くさないといけないと考え、報恩講の仏花を立てる仕事があるというのを聞いて始めてみた。
・昔はお寺自体にで花を立てる人があった。
・奉仕でやっていて、1年に1箇寺か2箇寺ぐらいしかやってなかった。
・作業も1日じゃなくて、2日も3日もやってご飯をよばれていた。
・松や南天、モミような材料もお寺に行ってから切っていたからだいぶ時間がかかった。
・今は材料を作って、全部軽トラに積んでくるから1日で済んでしまう。場合によったら半日。
・お寺さんも御礼をくれるけど、「いくら」って仕事ではないから、なかなかやる人を募集するってことはできない。一年中の仕事ではないから。冬だけだしボランティアのような仕事。若い人じゃやれん。歳くって定年になって、ある程度生活もなんとかやっていけるならいい。
・町の方のお寺さんで材料がないから造花でやっていたとこもあったけど、一年に一回の報恩講に造花ではだめだなっということで、今じゃや35箇寺ぐらい花立てに行く。
・そのうちやれないようになってくるかもしれない。後継者を見つけることが難しいし、材料を集めることも松食い虫が発生したりしてるし、歳をくったら動けんようになってくる。
・人生で一番長い仕事。百姓はやってはおるけど。自分でもびっくり。今までこうやって、どうにかこうにか大なり小なり細々とやってこれたってことが。大成功はしなくても、百姓はそう簡単に潰れないってことはそういうことだと思う。
・先は長いことはないが、やれるうちはやろうと思う。一緒にやってくれる人もいるし、大したことはできないけれど。
・もともと竹の仕事をしていて、とにかく食っていかなきゃいけないから、楽しいとかそういう感じはなかったけど、この仕事は楽しい。今でこそ、歳くってそう思う。ほんとにこれがあるから、生きがいを感じる。
・河合鉋一さんが一番の先生だった。
・やっぱり感性かな?よく見て、バランスを整えて、でもいざ荘厳してみると、なかなか思ったようになってない。近くで見るのと、荘厳してみるのとやっぱり違う。
・普段はきゅうり作ったり、最近ではタラの芽作ったりして「ふるさと市場」に持っていっている。
【大山欽也さん】(おおやまきんや)93才 経歴約33年
・お荘厳の美しさをもともと感じていて、その中でもやっぱり仏花の美しさに魅かれた。
・別院の仏花なんか本当に立派。ひとつやってやろうと思い定年から始めた。
・河合鉋一さんに誘われて始めた。自分は河合さんに習ったように仏花を立てている。
・戦争がはじまって、自分はたまたま台湾の工場にいたから生き残った。ちょうど取材の日の今日は、自分が復員した日だ。
・仕事は百姓で、冬はしいたけ、夏はきゅり、米、菊いろいろやったけど、花立てが一番長い。
・河合さんはそりゃあ熱心だった。これからはなかなか松の「真」が採れなくなると、先を見越してたくさんの「真」を作って、立てに行くお寺に渡して保管してもらうことを始めた。
・おっかあには頭があがらねえ。
・河合さんは「三方正面だぞ」と言っていた。参拝者から、そして内陣に座ったお坊さんから仏花はよく見えるからね。でも、どうしても正面にこだわっちゃうんだ今でも。
・花はお寺のしか立ててないよ、神社とか他の場所で立てることはないよ。
・お寺の仕事をしていると、なんか元気になった感じがする。
【大河原和也さん】(おおかわらかずや)65才 経歴4年
・NTTに勤めて定年退職。大山さんが母の兄で正月に行くたびに、「頼むぞ」と言われやってみることにした。
・五具足の中尊前の仏花はいつやっても難しい。2人でお互いに見つつ、手伝いつつ立てていく。いい感じに立てられたと思っても、前卓に置いた時に「あれって」て思うことはよくある。そして、手直しする。
【高橋鎮さん】(たかはしまもる)81才 経歴4年
・林さんに老人クラブの時に誘われたので、やってみたいと言ったのがきっかけ。
・自分はいろんな事業をやってきた。「下国谷のいもほり」なんかもやったよ。
・まだ4年だけど、やっている雰囲気が楽しいし充実している。いろんな会があったりするけど、目的が同じじゃないと変に気を使うこともあるでしょ。
・やっぱりやることがあるっていいことだよ。
【小笠原さん】 ※本日はお休みのため取材できず。
ここからは、仏花を立てる様子を写真でご覧いただきながらQ&Aをご覧ください。
【Q1.年間に仏花を立てに行くお寺は何件ぐらいありますか?】
A1.岡崎教区内のお寺で、報恩講やお彼岸など年間25~30件程度。10月末から2月末。「生きとるかっ?そろそろだぞ。」って始める。11~12月が一番忙しいね。月に15箇寺ぐらいになるときもある。だいたい土日に最近は報恩講を勤めるから、午前はあっちの寺、午後はこっちの寺とみんなで移動するときもあるし、手分けして立てに行く時もある。まあ、その時々だね。
【Q2.立華で心掛けていることは何ですか?】
A2.あくまで荘厳なので、ご本尊や御影などとのバランスやお寺の要望を考えている。仏花が目立ちすぎてもだめだもんね。
【Q3.使っている花材とその入手方法はどうやってますか?】
【松】
使ってない畑に育てている。背の高さぐらいの高さまでにして、芽を摘んで横に枝を伸ばす。ただ育てるだけじゃいい葉は育たないね。花立の時期になったら適宜切り、バケツにいれてストックするんだ。
【モミノキ】【南天】【バラン】【柏槇】【カイヅカイブキ】
近所の生えている家に行って切らせてもらう。
【菊】【小菊】【カーネーション】
栽培するのも大変だから買ってくる。
【ヤナギもしくはニシキギに白ペンキを塗ったもの】
ヤナギを使いたいが、仏花を立て始まめる10月の終わり頃はまだヤナギがないので、ニシキギに白ペンキを塗ったものを用いている。
【コミワラは麦わらがいい!】
空いた土地で作っている。米わらは柔らかい。米わらはどこでもありそうな気がすると思うけど、トラクターで今どきはバラバラになっちゃうもんね。やっぱ、麦わらがしっかりしてていいよね。
【地元のものを!】
愛知県豊田市は山が豊富なので、基本的に地元のものを切って使っているんだ。足りない花は購入している。年々、いい松が採れなくなってきているね。
【Q4.松華講の特徴・歴史、他の仏花を立てるお講との関わりはありますか?】
A4.50年以上の歴史があるね。他のお講との関わりはないよ。お講ごとにやっぱり特徴があるもんだから、なかなか比較しないと何とも言えない。でも、大事なのはお荘厳としての仏花だから、精いっぱい立てることだよ。
【Q5.長年携わる中で、みなさんもそして寺院・僧侶・門徒に環境の変化があったと思いますが、お寺について思うこと、変わってきたこと、大事にしなければいけないと思うこと、お寺だからできることは何だと思いますか?
A5.みんな年くったなあ(笑)。
お寺との関わりは昔っからどうしても年寄の仕事って感じになっている。なんとかならんかなあとも思うけど、仕方ない部分があるよね。だって、仕事勤めしてたら月参りがあっても家におらんもの。実際、自分も若い頃はそうだった。
やっぱり丁寧にお勤めをしてほしいなあ。そそうな読み方をされると残念だし悲しくなるね。やっぱり儀式やお勤めは大事だもんで。
【Q6.お寺の対応はどんなことがありますか?】
A6.花立ての御礼をいただく。だいたい花立ての時には、報恩講の他の準備もしているね。昼食をだしていただいたり、お茶やコーヒー、お菓子にお土産をいただくときもある。願永寺さんは、靴下が汚れるから靴下。
A7.それは悩みだね・・・。ご縁のある方、やってくれそうな方に声をかけている。だけど、松華講の人数をのどんどん増やそうとは思っとらんのだわ。だって、顔が見えんくなってもいかんしね。
【Q8. 一般向けに行っていること(生け花教室など)はありますか?】
A8.仏花を立てるのみ。特にしていない。仏花をたてることをやりたい。
【そのほかのエピソード】
・年取るとだんだん脚が悪くなってくるから、田舎の寺は大変だ。坂はあるし、石の段々上がらないかんとこもあるし。でも、町の中のお寺で言えば、昔は遠くからお寺が見えたもんだけど、今は高い建物がいっぱいあるで、見えせんから、近くまで行ってもなかなか分からないこともある。
・最近はブルーシートがあってパッと広げて始められるから楽でいい。昔はござ敷いてやっていた。
・今でこそ参詣席で花立てさせてもらっているけど、昔は廊下だとか、本堂の端の方でしか作業できなかった。それだけ本堂の中っていうのは特別な場所だったんだ。
・田舎って仕事がないって思われてるかもしれんけど、土地にしがみついてりゃ仕事はあるもんだし生きていける。だから百姓は強いね。
・年いってから河合さんっていう見習うべき存在に出会えたことが本当によかった。
・お寺にはご縁ができていろんなとこにお参りさせてもらっている。
・必ず松華講としてお寺に懇志を運んでいる。
【松華講のみなさんが立てられた仏花】
【集合写真】松華講のみなさんと、願永寺の住職さん、坊守さん。
【番外編】 願永寺さんでお昼をいただいたときに松華講のみなさんが話された面白エピソードです(笑)