伝道掲示板
水はつかめません
すくうもの
心はつかめません
汲みとるもの
(東井義雄)
つながり遇う惟い
今回伺った光永寺があるのは、岐阜県最西部の揖斐川町、伊吹山などの山々と揖斐川支流の粕川とに囲まれた自然が豊かな町です。ここは町域の91.1%が森林で、かつては林業が盛んに行われており、自然と人々が共生しています。
今年から設置された「伝道掲示板」は、住職の朝野千広さんがもともと熱望しており、また区長さんからの「掲示板が必要だろう」との後押しもあり、設けることとなったそうです。
総アルミ製でアイディアに溢れた作りとなっているこの掲示板は、ご門徒(責任役員)の藤原竹幸さんが、今年の二月に三年の歳月を掛けて完成させた手作りのものです。
藤原さんは、掲示板作製の経緯について「初めは木製でと考えていま掲示板を挟んでしたが、参考にと他の寺院の掲示板を見て回る内にアルミ製が良いと考えるようになり、より良いものをと追求して、やっと完成しました。私自身、アルミサッシの加工・施工業を営んでいるので、材料を集めてつくることができました」と、手作りをするのが当然のことであるような様子で話されました。
光永寺は、約140年前に「自分たちの村にお寺がほしい」という当時の小宮神区全71戸の強い要望により、旧揖斐郡久瀬村外津汲より移りました。その時、区民の皆さんが山から資材を持ち寄って、旧役場跡地に新しく本堂を建てたのです。そしてこの惟い、創り上げる文化は、今も受け継がれています。本堂縁の板の洗いと磨き掛けを総代の方々が行なったり、畳の入れ替えの時は下地を門徒の皆さんで敷き直したり等々、それが自然なことのようです。
しかしご住職は、「最近の急速なサラリーマン化による考えの変化や、断片的な情報に流された・そこまではやる必要がない・という右に倣え的な雰囲気を一部より感じることがあります」といいます。それでもまだ、「生活の中心にお寺があり、区民の願いである「お寺は村のお内仏」という言葉は生きています」と話されます。
住職と門徒さんの「皆でおつくりするお寺」をキーワードにしています。「お寺とふれ合うとお寺が身近になります。一部の人だけでやっているのではダメなのです。だから今、・心が伝わる残し方・の一つとしての・伝道掲示板・に大きな意味があるのです」と話す姿に、教えの灯火を輝かす者としての願いを強く感じました。
(大垣教区通信員・北條邦康)
『真宗』2020年11月号「お寺の掲示板」より
ご紹介したお寺:大垣教区第8組光永寺(住職 朝野千広)
※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。