昨年(2020年)の春以来のコロナ禍により、全国的に法話会などの聞法する機会が中止または縮小せざるを得ない状況が続いています。このような状況下において、東京教区の若手僧侶を中心とした有志が「浄土真宗法話配信有志の会」を立ち上げ、「浄土真宗Live」というタイトルで法話のライブ配信を行っています。
今回「浄土真宗Live」の取り組みについて、代表者の竹川英紀住職(東京4組願正寺)にお話を伺いました。
YouTube「浄土真宗Liveチャンネル」
―「浄土真宗Live」を始めたきっかけについて、直接的なきっかけはコロナ禍だったと思いますが、それ以前に配信を考えていらっしゃいましたか。
竹川住職 コロナ禍以前からインターネットと通常の法話を組み合わせた法座をやっていきたいと考えていましたが、状況が整っていないと思い、躊躇していました。昨年(2020年)2月末から教区の行事などが続々と中止になって「ここでやらなくてどうするんだ」ということで立ち上がった感じです。個人の取り組みとしてではなく、有志として東京教区内の若手僧侶に声がけして運営に携わるメンバーを集めました。
「浄土真宗Live」運営メンバーの皆さん
(上段右2人は配信時の講師である本田彰一氏および田澤廣明氏)
―法話を配信する時に心がけていらっしゃることはありますか。
竹川住職 よく誤解されるのが、今まで縁のなかった人に対してインターネットで法話を配信すると考えられがちですが、実は全く違って、お寺関係の方や、色々な所で聴聞されていた方など、すでに縁のある人たちがコロナ禍で法話を聞く場がなくなりました。その方々を対象としたインターネットの法話配信です。つまり、いつもの聞法者の皆さんのためにやっているのが「浄土真宗Live」だということを意識しています。ただ現実には、全国でも同じように法話を聞くことができなくなった方が多くいらっしゃいますから、そういう方にも伝わっていると思います。
―配信している法話の内容について、特にインターネット配信を意識していることはありますか。
竹川住職 特にはありません。いつも先生がやっている法話を聞かせて頂くことが基本にありますけれど、画面で見ることが前提ですので、文言の見せ方など特性を生かしてやっていますが、内容そのものはインターネットだからといって特に変わるものではありません。
―法話をされる講師の方について、どういったご縁で依頼されていらっしゃいますか。
竹川住職 東京教区の方については「浄土真宗Live」のメンバーで話し合って、その中で毎回決めています。他教区の方についてはその都度ご縁がある方や「この方の話を聞いてみたい」という意見が出たときにあらためて依頼をします。通常の法話の依頼の仕方と同じです。ネットに限らずさまざまな場で法話をし、みんなで座談し合えるという環境ができるためには、法話をする人が多くいた方がいいに決まっています。そのためには、特に若手僧侶で法話ができるような人が増えてくるといいと思っています。
「浄土真宗Live」配信時の様子
(左「浄土真宗Live」代表の東京4組願生寺住職 竹川 英紀氏
右東京1組圓照寺副住職 花園 一実氏)
―視聴された方からリアルタイムで意見や感想などは来ますか。
竹川住職 実際の法話でも、法話が終わった直後や法話中に意見を言うことは難しいし、ある程度考えて出てくるのだと思います。意見はYouTubeやFacebookで募集していますから、配信が終わった翌日とか2日後ぐらいに来ることが多いですね。また法話を聞きっぱなしにせずに、日をあらためて講師の先生を含めて参加したメンバーで座談を行うときもあります。理想として、法話を配信した後に全国各地でZoom上の座談会が立ち上がり、そこで出た意見を集約して、それを先生にフィードバックしてお互いに学び合っていく。本当はそういう事ができたらいいと思っていますが、なかなかそこまでできてないですね。
―今後、ワクチン接種者が増えてコロナ禍が収まっていくと思われます。法話会が再開された際に、インターネット上でライブ配信を続けながら両輪で行っていく形になるのでしょうか。
竹川住職 コロナ禍によって推進されたオンライン化の流れは、止まらないですね。オンラインで法話を配信するというのは、時期尚早だと思っていました。しかし、この状況下で、世間一般ではオンライン化が10年早まったと言われ、我々真宗大谷派においては10年以上早まったと考えられます。早まったのをどうするのかという問題です。リアルとネットをどう連携させていって、それを東京教区だけでなく全国の教区とどのように連携していくのかという問題になってくると思います。
―これから動画配信だけに限らず、教化活動で新たに何かやっていこうと考える方に何か伝えたいことはありますか。
竹川住職 「失敗するからやらない」ではなく、失敗を糧に、めげずに続けてやっていきましょう。やれば必ず失敗することもありますので。
「浄土真宗Live」(主催:浄土真宗法話配信有志の会)
(インタビュアー:東京教区通信員 平松 正宣)
◆浄土真宗Liveの取り組みは東本願寺出版発行の月刊『同朋』2020年10月号にも掲載されています。ぜひご覧ください。