伝道掲示板
報恩と忘恩
恩に気づけば頭が下がる
どこまでも頭の下がらん
私でした
(永福寺住職)
二匹のワンちゃんと発信する掲示板
富山市中心部の住宅街に位置する永福寺。訪れると真宗寺院としては少し変わった様式の建物を目にする。理由を住職にお聞きすると、太平洋戦争末期、富山市は米軍のB29爆撃機により大空襲をうけ大きな被害を被った。
永福寺もご本尊、わずかな仏具をお運びすることができたものの、建物はすべて燃えてしまい、当時の住職の「二度と燃えてほしくない」との願いのもと、燃えにくい鉄筋コンクリートで再建された。そびえたつ塔は仏舎利塔をイメージしているという。お話を聞きあらためて拝見すると、二度と悲しいことは起きてほしくない、ここで起きたことを決して忘れないでほしい、そんな願いがこの建物にはこめられているように感じた。
現在、お寺では二匹の犬を飼っておられる。名前はオスの仏恩くんとメスの蓮華ちゃん。お寺では『ブットン通信』というものを始められ、仏恩くんと蓮華ちゃんの写真を載せ、住職が日頃感じていることを仏恩くんと蓮華ちゃんが代弁するという形で掲示板に掲示し、月に一度は更新しておられる。
「以前は著名な先生方の言葉を掲示していたが、新型コロナウイルスが感染拡大するにつれ、自分の言葉でなにか発信することができないかと思い、そこでこの子らに説法をしてもらっています」と語られる住職。内容は新型コロナ、自然災害や地球温暖化問題など、世の中で起きていることについて住職が思うことを、法語をまじえて発信。最近の話題は新型コロナに関することが多く、蓮如上人の『疫癘の御文』を分かりやすく意訳し紹介するなどしておられる。また『ブットン通信』は掲示のほか、月忌参りの際にご門徒に配布もされる。
「掲示板はお寺と住職の情報の発信基地であると思う。住職が日頃何を思い、感じているかを発信することが大事なことではないでしょうか」と言われる住職。発信者が何を思い、感じているかを伝える中で紹介される法語はより身近に聞くことができるのではないかと、住職のお話を聞き思った。
犬を散歩につれていくと「お寺のワンちゃんだね!」とよく声をかけてくれるという。仏恩くんと蓮華ちゃんも掲示伝道の活動の一翼を担っている。
(富山教区通信員・砂谷知昭)
『真宗』2021年7月号「お寺の掲示板」より
ご紹介したお寺:富山教区第十組(住職 長 真寿)
※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。