療養所を訪ねて④多磨全生園

「真宗大谷派ハンセン病問題に関する懇談会」第2連絡会委員 旦保 雅人

   

 東京都東村山市にあるハンセン病療養所、多磨全生園では、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、毎年開催されていた花まつりが、昨年は中止になってしまいました。報恩講も中止となり、今年の花まつりも、再び中止となりました。全生園に関わる行事がすべて停止してしまい、もう一年以上が経過しています。いま園がどのような状況なのか、全生園の真宗報恩会の代表の方にお話を伺いました。

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全生園の様子

 現在、多磨全生園には120人ほどの方が生活しています。真宗報恩会の会員は10人いますが、会って話ができる人は、もう2、3人になっています。
 コロナの影響により、園外の人との関わりはほとんどなくなってしまいました。真宗報恩会の様々な行事はもちろん、地域との関わりもできず、園内の散歩ぐらいしかできません。
 また園内においても、今年赴任された全生園の園長とも、まだ顔を見ることもできていません。入所者同士であっても、カラオケや集会、お茶飲み話もできず、挨拶程度の関わりしかとれません。園内に売店はありますが、園外に出て自由に買い物ができないので、それが一番困っています。
 5月30日から、入所者もワクチンの接種が始まり、毎日六人ずつ接種しています。

   

コロナ差別の問題

 コロナに感染してしまった方への差別は、病気のことを知らないからだと思います。わからないことに対して、人は不安な気持ちが先に立ってしまい、余計に恐れたり、怖がったりすることがあるのだと思います。

   

今後の展望

 どのように考えていいのか、見当もつかない状況にあります。特に真宗報恩会は、行事に参加できる人がほとんど一人だけの状況になってしまい、これからどうしていいのか悩んでいます。

   

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 電話での短い時間ではありましたが、久しぶりにお話を伺って、全生園と真宗報恩会の現状を聞かせていただきました。入所者の方は高齢化が進み、基礎疾患がある方も多いので、私が考えている以上に、人との関わりを制限されている様子でした。また、コロナ下での生活も1年以上にわたり、ある程度のものは売店で取り寄せることもできるようですが、必要なものが自由に購入できないことも困っておられました。

 コロナ差別については、「コロナのことを知らないからだと思う」と聞かせていただきました。私も初めて全生園に伺った時、入所者の方が入れてくださったお茶を飲むことができなかったことを思い出しました。当時の私は、全生園に入所しているということは、病院に患者が入院しているのと同じだと思っていました。患者は病人だから入院していて、入所者も保菌者であると思い、怖くてお茶を飲むことができませんでした。本当のことを知らないと、本当ではなくても、自分がその時に感じたことに従ってしまいます。新しく見つかったウイルスのため、わからないことが多いのですが、新型コロナウイルス感染症やそこから起こる様々な問題にも、きちんと向き合わなくてはいけないように思います。

 今後の展望については、特に真宗報恩会のこれからについて心配されていました。真宗報恩会に関わる東京教区のスタッフにも声をかけて、代表の方と一緒になって考えていきたいと思います。入所者の方は、平均年齢八十歳後半という超高齢化が進んでいます。参加できる方、動くことができる方が減ってしまっている状況でも、「ハンセン懇」メンバーやハンセン病問題に関わる方々のお話も伺いながら、安心して交流できる場を開いていきたいです。

   

療養所を訪ねて⑤大島青松園

「真宗大谷派ハンセン病問題に関する懇談会」第4連絡会委員 岡 学

   

 全国どこの療養所も同じだと思いますが、香川県高松市の離島にある大島青松園も昨年の3月から施設見学ができなくなっています。島に渡ることができず気をもんでいましたが、昨年5月に陽性者数の第一波がおさまりつつあった頃、福祉室から「お寺の掃除に来るのであれば来てもいいです。ただし一人で」という連絡をいただきました。それから毎月、月末にお寺の掃除をし、自治会長の森さんから園の様子をお伺いしています。

   

青松園の現状

 大島会館でのカフェやセンターでのカラオケなど、園内での活動は元に戻したこともあるようですが、島外との交流、外出などは大きく制限されています。校外学習などで多くの子どもたちが島に来ていた一昨年までのことを思うと寂しい限りです。
 5月の訪問は、28日に官有船の昼便でお掃除に参りました。ちょうど、森さんとOさんが徳島県の中学生とオンラインで授業をされていました。オンラインでの交流授業は何度かされたようです。
 現在44名の入所者の方々は、一回目のワクチン接種が終わったところです。しかし今しばらくは、オンラインでの交流しかできないと思いますし、皆さんが楽しみにされている8月の夏祭りも難しいようです。

   

港の整備から将来構想へ

 そのような中でも、港の整備がいよいよ始まるという、うれしいニュースがありました。現在の桟橋は防波堤として残し、その内側に浮桟橋ができます。潮の干満に左右されない高松港の桟橋と同じです。2年ほどをかけて完成の予定です。
 長年の懸案であった港の整備にめどがたったので、次は将来構想、施設の永続化問題を地元の高松市、香川県と協議していかなければならないとのことです。今回の新型コロナウイルス感染症は、ハンセン病や後天性免疫不全症候群などと同じ過ちをおこしています。病気自体の苦しみとは別の苦しみを感染者や家族に与えてしまっていることを、入所者の皆さんは本当に悲しまれています。療養所をきちんと残し、今のように多くの子どもたちが人権学習をする場として、大切に維持していかなければならないと考えます。

元真宗会長の森川さんが育てていたサツキと森会長

四国教区の取り組み

 昨年度は島での同朋会ができなかったので、テレビ番組を録画したDVDと本山発行のハンセン病問題に学ぶ資料集を使って学習会をしてきました。また、今年の3月には四国教務所と青松園の自治会を結んでのオンライン同朋会をしました。新年度は、学習を教化委員内だけでなく、教区内各組でも実施していただこうと呼びかけているところです。
 昨年は沢山の方が亡くなられました。皆さんとお会いできる時間は限られています。今回のコロナウイルスによって、大切な会議等が一時停止になっていることに危機感を持っています。来年こそは、生活が元に戻り、瀬戸内三園合同での花見も開催できるように願っています。

   

   

真宗大谷派宗務所発行『真宗』誌2021年8月号より