今回はご門徒のお内仏を再利用する活動をされている名古屋教区第20組林高寺の副住職・本多龍氏からお話を聞かせていただきました。昨今の環境問題にも関連してくる内容であり、お内仏をお預かりすることになった経緯や願いを尋ねてみました。

―今回の「お内仏のリメイク」はどのようなきっかけで始まったのですか。

   本多副住職とリメイクされたお内仏

本多氏 この地域は戦時中たまたま戦火から逃れ、昔からの細い道や、戦前からの家が残っています。お内仏も昔ながらの金仏壇で大きなものが多いです。ですが、ここ何年かは後継ぎ問題などで空き家も増え、お内仏を処分したいという相談が増えました。そこで家が途絶えるご門徒のお内仏を引き取り、リメイクして再利用させて頂きました。ここ数年は特に増えましたが「後継ぎがいない」、また「子どもがいても東京から帰ってこない」、そんなご門徒がたくさんおられて、職人さんの精巧な作りのお内仏が捨てられていく状況を何度も目にしました。中古のお内仏は、ほぼ需要がないので仏壇屋さんも捨てるしかないそうです。私はこの状況を何とかしたいと思い、知り合いの仏壇屋さんに相談したことから「お内仏のリメイク」が始まりました。

―具体的にどのようにリメイクをするのでしょうか。

本多氏 片手で簡単に移動できるようにローラーを付け、軽量化してもらい、現在、お寺のホールに置かせてもらっています。またコロナ下で葬儀の在り方も変化している中で、ある葬儀屋さんに出会い、自宅やお寺を会場にして、少人数でも葬儀ができるように、葬儀費用をできるだけ抑える形を考えました。私たちの先祖が苦労して安置したお内仏。それは本来、家族皆が手を合わせることが出来る空間です。そのお内仏が「ゴミ」として捨てられてしまわないように、お寺で引き取り、リメイクし、また皆が手を合わせられる空間として葬儀、法事で活用していただいています。このことは広い意味で言えば仏事の場を取り戻すということにもつながると思います。

お内仏を紹介した林高寺の寺報を手に説明する本多副住職

林高寺は平安時代に創建され、1458年天台宗から転派し、父が17代目の住職です。ホールや本堂の建物は45年前に鉄筋で立て直してから、現在まで続いてきています。当時、人が集まることを想定し、演劇などができるように舞台もあるホールとして作られたものですが、人が集い、使ってくれないと何の意味もありません。そこで可動式のお内仏を設置し、ホールを区切るなどして、お寺で少人数でもできる葬儀が可能になりました。

―ご門徒の声、反応はいかがでしょうか

本多氏 「お内仏をどうしたらいいか悩んでいたので良かった」「年金生活でお金がないから直葬を考えていたが、考え直しました」「慣れ親しんだお寺で送ってもらえるなら安心」という声がありました。現代は世界中でSDGsを掲げています。環境問題も大きな問題の一つです。ちなみにSDGsの17の持続可能な開発目標のうち、12番目が「つくる責任と、つかう責任」です。お仏壇屋さんは作りたくても大きな金仏壇はなかなか作れません。私たちも「和室がない」「スペースがない」など生活ニーズも変わり、大きなお内仏は簡単には安置できません。

何とか伝統を引き継ぎたい仏壇屋さん、ニーズに合わせた葬儀ができる葬儀屋さん、また、お寺の場を有効活用してもらいたい私、これらが関係して今回のことが実現したのだと思います。

―今後についての展望や、想いを聞かせてください。

本多氏 私がお伝えしたいことは、単なる寺院葬儀や家族葬の推奨の話ではなく、捨ててしまうものから新しいものへ再生するということです。この取り組みを一つの事例として、私と同じように悩んでいるお寺やご門徒があれば、共有したいと思いました。お内仏を作る職人さんの伝統を残していきたいという願い、また亡き人と向き合うという大切な時間、空間である葬儀の場、そして私たち真宗門徒の先祖が大切にしてきた思い。これらをとおして、一人でも多くの方に、教えに出遇っていただきたいということが、私の想いです。

今後も林高寺のホームページや機関誌などで広くお知らせしていきたいと思いますので、全国の寺院でも共有し、ご意見をいただきたいと思います。

(インタビュアー 名古屋教区駐在教導 池浦南雄)