伝道掲示板
みんな平和について
語るけど
誰もそれを平和的な
方法でやってないんだ
(ジョン・レノン)
自らを「気になったことは試してみないと気が済まないタイプ」と称するのは青森県八戸市願榮寺副住職吉川了真さん。今回は掲示板を活用した新たな取り組みに挑戦する了真さんにお話を伺いました。
1962年頃に、本山の同朋会運動が始まったことを機縁として設置された願榮寺の掲示板は、代替えを経て現在のもので三代目。先代の住職、現住職へと引き継がれ、了真さんがその役割を担うようになったのは2008年のことでした。掲示頻度は開始当時から変わらず毎月一回。教化活動の一環として試行錯誤し取り組んできました。
願榮寺の掲示板で特に目を引くのは、アニメのセリフや歌の歌詞、本の一節など、いわゆる仏教語以外の言葉の多さです。その理由を尋ねてみると、実は開始当初は。仏教語に触れてほしいという想いから宗祖の和讃や経典の言葉を多く引用していたそうです。しかし、了真さんはある問題に直面することとなります。「人から意味を聞かれたときに自分の言葉で説明ができない」。そこで、見る人に向けてだけではなく、今の自分の心情や課題に沿った言葉を、ジャンルを問わず載せるようにしました。日常生活の中で、気になった言葉は何でもすぐに書き留められるように、法語帳は常に手の届くところに置いています。
また、もう一つこだわりを持っているというのが「文字数と文字のサイズ」です。願榮寺の掲示板は通勤通学路に面して設置されているため、行き交う人々が前を通り過ぎるまでの「20秒以内で読み切れる文字数」に収め、大きめの文字にするよう工夫を凝らしています。その甲斐あってか、実際に立ち止まって読んでいる人やメモをとる人、写真を撮っている人もいるのだとか。
しかしその一方、「わかりやすさゆえの落とし穴」にも気を付けていると言います。世情なども加味し、差別的な表現、誰かを傷つけてしまう表現になってはいないかという点に細心の注意を払い、受け取り手の気持ちを大切に、慎重な言葉選びを心掛けています。
そして、2018年頃からはインスタグラムも活用し始めました。そこには掲示板の写真と共に、自身の解釈分を投稿しています。今や若い人だけのツールではなくなっているSNS。願榮寺のご門徒さんのフォロワーは60代の方が大半です。最初は興味本位で始めたものだったそうですが、インスタグラムを通した出会いの多さは副住職の想像を超えるものでした。普段は離れて暮らしているご門徒さんのお子さんやお孫さん、他宗派のお寺さん、また、インスタグラムを見て初めてお寺に来られる方など、今までなかったつながりが広がったそうです。
最後に今後の展望についてお聞きすると、「形にしてから公表したいのでまだ内緒です」と了真さんはおっしゃいます。これからどんなことに挑戦なさるのか楽しみです。
(奥羽教区通信員・宮腰寿美加)
『真宗』2022年6月号「お寺の掲示板」より
ご紹介したお寺:奥羽教区青森県第三組(住職 吉川了晃)※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。