伝道掲示板

人の失敗や

間違いが見える眼で

自分が見えたらいいですね。




北海道のほぼ中央に位置する旭川市の北西に江丹別という農村地帯がある。(たい)(がん)寺は1909(明治42)年にこの地に建立され、ご門徒や地域の人とあゆみを進めてきた。江丹別という地は旭川市内ではあるものの、市街地までは車で25分程かかり、山をひとつ越えなければならないような場所である。さらに夏の気温は30度を超え、逆に冬はマイナス30度を下回ることがあり、1年の寒暖差が60度以上。夏は暑く、冬は寒いという厳しい環境の中で人々は生活している。


泰巖寺掲示板の前で

過疎化と高齢化に伴い、将来を見据えて、2004年に旭川市内の春光台という地に支院という形で新しくお寺を建てた。さらに2015年本院移転事業を行い、これまで江丹別に安置していたご本尊を移し、今は春光台の地がその活動の中心となっている。本院となった春光台には若院の顕さん夫婦が生活をし、江丹別には住職の興文さん、坊守の章子さん夫婦が生活しており、それぞれがその掲示板を担当している。


「お寺の掲示板はご門徒以外で人とつながれる大事なものであるとともに、目に留まりやすいもので、自分自身が様々なお寺に足を運ぶ時に、やはり一番先に目に入ってくるのは掲示板です」と、顕さんは言う。


「基本的には僕の学びの中で気になった言葉や、テレビでふっと心に止まる言葉を書いています。なのでメモ帳は常に身近においています」。人間が抱える言葉にならない苦しみや不安、普段なんとなく素通りしている感覚にふと足を止め考えてもらえるような言葉。また現代社会の価値観に疑問を投げかけるような言葉を選んでいると話す。


掲示板に絵を描いてにぎやかに

泰巖寺の裏には小学校があり、掲示板がある道路は子どもたちの通学路となっている。お寺の前を通る小学生や、車で通る方が足を止め見ていったり、時にはその言葉を書き留める姿も見受けられる。また、通りすがりの人が掲示板に書かれている内容の意味を尋ねに来たこともあるという。


顕さんは掲示板を書くうえで、小学校1年生でも読めるように、漢字にはフリガナをつけたり、文字だけでは寂しいので挿絵を入れたりしている。また4歳になる娘に絵具で好きに絵を書かせてみたりと、にぎやかな掲示板にすることを心がけている。


今回お話を聞いて驚いたのは、一度掲示した法語はその月限りで終わりではなく、顕さん自ら本の「しおり」として制作していることである。ご門徒の方にお配りし、本を開いたときにその法語が目に入ったり、お寺のトイレの壁などに貼って、ふっと顔を上げたときに視界に入るようにすることで、普段から法語が目に入る環境を作っている。

顕さんが制作した「法語しおり」


顕さんにとって掲示板は、地域の人とお寺との関わりの架け橋となるものであると考え、これからも大切にしていきたいと意気込んでいる。



(北海道教区通信員・矢田真之)

『真宗』2022年9月号「お寺の掲示板」より


ご紹介したお寺:北海道教区第16組泰巖寺(住職 川原興文())※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。