滿成寺は飛騨高山の街中より車を30分程走らせた、自然豊かな場所にある。寺の前の県道は「せせらぎ街道」と呼ばれ、行楽シーズンにはドライブの絶好のスポットとなる。紅葉も盛りを迎えた10月28日夜、「二十八日講」に取材に伺った。


滿成寺

滿成寺の「二十八日講」は、同朋会運動が盛んになった頃に始まり、同朋会法座として毎月開かれている。


本堂前には「二十八日講」を知らせる看板が

取材日のお参りは約20名。この人数から、だいたい何軒程の門徒戸数を想像されるだろうか。地区外に転居された方もいらっしゃるが、滿成寺のある坂下地区だけならば、17軒程なのだそう。実に、一家に一人以上はお参りされていることになる。


「今日の予定は大丈夫だったの?」「うん、早めに終わったから、来れたんやさ(来ることができた)」など、ご近所同士で労いの声を掛け合う様子もあり、心温まる思いがした。


総代の方が喚鐘を鳴らし、「正信偈」のお勤めや御文の拝読、住職の法話前の三帰依文は赤本(『真宗大谷派勤行集』)を見ながら全員で声を出す。全体で1時間ほどの日程だが、お参りの方一人ひとりの参加によって会が作り上げられている様子がとても印象深かった。また「喚鐘は、総代になると前任の方から打ち方を教わるんです」と教えてくださった。


滿成寺では毎月の「二十八日講」の他に、報恩講、修正会と、毎月1度は必ず何らかの法会があるとのこと。


「私がこのお寺に嫁いできて一番驚いたのは、お正月の修正会です。赤ちゃんからお年寄りまで、本堂いっぱいにお参りの方がいらっしゃいました。今では、お参りの人数こそ減ってしまったものの、お正月に帰省してきた子どもたちも変わらずお参りに来てくれるのですよ」と坊守の礼子さんは語られる。

法会の準備もご門徒の方が行う


法会の様子

なぜここまで沢山の方がお寺に集まって来られるのか。何か工夫はあるのかと思い、ご住職に尋ねたところ、「工夫は特にありません。派手なことをしても続きませんから。強いていうなら、ずっと続けてきたということでしょうか。今後も、過疎化が進んだとしても、お参りしてくださる方がいる限り、ずっと続けていきたいと思っています」とのお答え。


昨今のコロナ情勢のみならず、会の存続が難しい場面もこれまでにあっただろう。ご門徒の方々と共に、変わらずに継続されていくことの大切さを教えられたように思う。


(岐阜高山教区通信員・渡邊陽子)


『真宗』2023年1月号「今月のお寺」より

ご紹介したお寺:岐阜高山教区清見組 滿成寺(住職 夏野 了)※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。