つながる「場」の入口になっているお寺

福岡県久留米市にある雲遊寺は[雲の子文庫]という私設図書館を運営し、絵本の貸出や読み聞かせ、絵本と合わせたワークショップなどを開催しています。また、出張青空文庫として移動図書館も開催しています。その他、子ども会を月に一回行い、地域の子育てを応援しながら、お寺をつながる「場」として、地域の人びとと共にネットワークを作っています。

雲の子文庫スタッフ

手作りの竹のアスレチックで遊ぶ子ども達

◆絵本から学ぶ憲法

2022年10月14日、雲遊寺の本堂にて【檻の中のライオン】の著者、弁護士の楾 大樹(はんどう たいき)さんをお招きして、憲法を学ぶ講演会が行われました。

「ライオン=国家権力」「檻=憲法」「その他の動物=国民」に例えて、楾さんは、馴染み難い憲法を解りやすくお話して下さいました。

エネルギー溢れる楾 大樹さん

基本的人権は、生まれた時から与えられているけれど、それは誰からもらったの? なぜ持っているの? 憲法を守らないといけないのはなぜ? 政教分離って? そんな難しそうなお話も楾さんはマペットを使いユーモラスに語られるので、とても解りやすく話に引き込まれます。

参加することで、なぜ選挙に行かなければいけないのか、国民一人ひとりの一票が、どれだけ大切な国民の「声」なのかが解り、私たちが選挙に行くことは、家族を守るために必要なものだということを感じました。

講演会は参加型だから最初から最後まで笑いのある楽しい時間

◆お寺を憲法を学ぶ場に

絵本の活動や子ども会を行う中から、なぜ憲法に辿り着いたのか、坊守の井波春奈さんにお伺いしました。


井波春奈さん:雲の子文庫という絵本活動をしている観点からいえば、まず、平和でなければ自由に絵本を楽しむことはできません。子ども会活動の観点から言えば、安心安全でなければ子どもは自由に遊べません。【平和といのち】両方が守られてはじめてこの活動も成り立ちます。だからこそ、私たち大人はそのために何ができるのかと考えた時、意外と憲法を知らないことに気がついたんです。憲法改正とか憲法第9条がどうのと、みんな同じ平和に向かって憲法について話しているのに、立場が違うといろんな視点に別れてしまう。そもそも憲法のことについて私達は、どれくらい知っているのか? 公民でなんとなく勉強した私達が大人になって、子ども達に本質的な事を教えられないままで、子ども達は、バラエティー的な内容で簡単に捉えています。選挙権が付与される年齢が引き下げられて、我が子がその歳に差し掛かろうとしていたり、雲の子スタッフには18歳になり選挙権を持った子どもが出てきたりしたんです。そうしたら「選挙に行きなさいよ! 一票は大切だから!」と当たり前のことは言えたとしても、子どもから「その一票で何を決めていくの? 私達は何を選んでるの?」と聞かれた時、どれくらい言えるのか…やっぱり憲法を知らないと上っ面しか言えません。いつかちゃんと勉強したいね。と、スタッフと話していたんです。普通に開催されてる憲法の勉強会では、第9条の話や自衛隊反対など明確な主張のある勉強会しかありません。そうではなく、私達は、何を守っているの? 何を守らされているの? 憲法とは何? を話してくれる人を探していたら、楾さんが、絵本をとおして発信していたので、その絵本をSNSで紹介するようになりました。そのご縁から講演をお願いしました。参加した子ども達が「学校で習うのと全然違っておもしろかった!」と興味を持ってくれて波及のきっかけになれて良かったです。お寺は命をつなぐ場所、命に関わる場所だからこそ、憲法第9条がなぜ必要なの? なぜ守らなきゃいけないの? を私なりの言葉で理由を述べられるようになりたかったし、子どもも大人も一緒に聴きたかったから、お寺で勉強する意義はあったと思います。


坊守さんの語っている姿は、とてもイキイキとしていました。取材をとおして、雲遊寺は、寺族とそこに関わるスタッフが一丸となって楽しんでいるなと感じました。そして、雲遊寺の魅力は、巻き込み力だと思いました。

楾 大樹さんYouTube https://youtu.be/M2EfsZ0OPi8
雲の子文庫 Facebook https://www.facebook.com/kumonoko.bunko/

(九州教区通信員 本田智子)