本堂に並べられた色とりどりの色紙、そこにはカラフルな仏様やお坊さんとともに、仏縁となる一言が書かれています。住職の直筆によるこの色紙は、様々な人の手を渡り、今またSNSなどを通じて多くの人の手に仏縁を届けています。


川瀬住職の手による法語絵。写真はほんの一部

住職の川瀬さんは幼い頃から絵を描くことが好きで、また篤信な祖母のおかげで仏法と縁の深い生活を送られてきました。高校生の時には書道部に所属し、文化祭で出品した仏画の色紙を多くの人の手にとってもらえたことで「人々に法語絵が求められている」と気づき、現在まで続く活動のきっかけの1つとなりました。またその頃「慶泉」の雅号を授かり、現在SNS上でもその雅号で活動されています。




2つ目のきっかけは、願林寺の住職となられた時のことです。後継者のいなかった願林寺に入寺することとなり、見ず知らずの土地でご門徒の皆さんといかにコミュニケーションを取ればよいだろうかと悩んでおられたとき、これまでに培ってこられた絵を色紙に描き、メッセージを添えてお渡しするという「法語絵(法語色紙)」を活用しようと思いつかれました。月参りや法事はもちろん、毎月四回の法座など、折にふれ法語絵を用いることで、様々な人の手に渡って「仏法にふれるご縁を増やしていきたい」、その願いの元、今の法語絵が形作られていきました。色紙は気軽に手元に置くことができ、また人の手を渡って様々な人に届けることができます。外国の仏教研究会へのおみやげにされたり、思いがけない人の手にあることを知ったりと、そのご縁の広まりを感じる出来事もうかがえます。


法語絵を書く川瀬住職

さらに近年、SNS(Twitter)を通じて法語絵が広まることで、思いがけない波及が見られることとなりました。コロナ下で縮小しつつも法座は欠かされなかった川瀬住職ですが、人と人とが出会えなくなったと感じておられ、そんな対面が難しい中でもつながりあうことのできるSNSでの活動を始められました。日々の何気ないつぶやきや、その日描いた法語絵の写真などからはじまった活動ですが、全国の方から法語絵を届けて欲しいという声や、逆にそこから法座や法話にお参りに来られるようになった方など、よりいっそう広くご縁を得ることができるようになっていきました。


本堂での法座の様子

「ことばの中で生かされている我々は、ことばによって迷い苦しむ。しかしことばでしか目覚めることができないのも我々である。脈々と伝えられてきたことばに照らされながら、迷いと目覚めを繰り返す歩みこそが浄土真宗の信心の具体的な(すがた)ではないだろうか。その「ことば」の一つの形として、どんな出会いでもよいから仏法を聞く縁になってほしい」という願いから生まれた法語絵は、自身が日常と自我意識に埋もれず仏法に出遇っているかの不断の点検でもある、と川瀬住職は語られました。


慶泉(川瀬住職)Twitter


(大垣教区通信員・内田篤宏)


『真宗』2023年2月号「今月のお寺」より

ご紹介したお寺:大垣教区第11組 願林寺(住職 川瀬 滋)※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。