長浜市の白櫻寺では、約3年前から長浜教区第20組の若手住職を対象に有志を募って真宗の教えを学びなおす取り組みとして月に1回の「若手住職等研修会」を行って来られた。
この取り組みのきっかけは、「これまで大切にしてきた教えが次の世代に伝わらない」という危機感だったとのこと。
長浜市は滋賀県の北部に位置する人口約11万5千人の市で、数字で見るとそれなりの人口規模があるように見えるが、毎年1000人近くの人が市外へ転出している実情があるという。都市部への人口集中から、地方における若者の市外流出や少子化によって家族や地域の関係がどんどん希薄になってきた。そのため、3世代同居が前提で成り立っていたさまざまな文化が維持しづらくなり、仏事や葬儀のあり方もだんだんと簡略化していった。そこへ追いうちをかけるように新型コロナウイルス感染症の感染拡大が起き、人が集まる機会が失われていった。
しかし、時代の変化は嘆いても誰にも止めようがない。お釈迦様が「世の中を泡沫(うたかた)の如く、陽炎(かげろう)の如くと見よ」とおっしゃるように、常に世の中は変化し続けるものだ。
“我々には、どんなに世の中が変わっても、その変化に対応しながら真実の教えを未来に伝える義務がある”
限られた機会の中で、聖人の教えを後世に伝えるためには真宗大谷派教師である住職をはじめ、寺族がこれまで以上に真宗の教えに耳を傾け、しっかりと向き合う必要がある。「末寺は門徒さんとの距離が一番近い。これからを背負っていく若手住職の方々にしっかりと学んでほしい」と白櫻寺住職の中濱さんはそう考えられた。
そうして始められた「若手住職等研修会」。
最初は特段、講師をたてるわけでなく、中濱さんを道場主として同じ第20組の若手住職等らとともに「真宗の教えを勉強し、日頃の思いや考え方をお互いに話し合う」そのような研修会であったとのこと。“研修会”というと少し身構えてしまうが、決して参加を強制するものではなく、学びたいと思う者が気軽に足を運ぶことができるようにしていたのだという。ある時期からは講師をお呼びすることになったが、受講者負担が大きくなれば足を運ぶ機会も減るかもしれない、と費用のほとんどを白櫻寺が負担していた。
“良い集まりであっても持続性がなければ伝え続けることはできない“
長浜教区第20組の月例役員会で「第20組の事業として取り扱ってはどうか」という打診もあり、2022(令和4)年からは「若手住職等研修会」の名称を改め、長浜教区第20組月例学習会「真宗道場」として新たにスタート。併せて白櫻寺の「同朋の会」としても位置づけた。
より多くの方に聞法してほしいという思いから、「真宗道場」はこれまでの住職・寺族に加え、広く一般の方々も参加できるように体制を変更し、最近では毎回20名ほどが参加されている。その半数が一般の方々で、中には遠くから来られる方もいる。「門徒さんのおかげで真宗の教えが続いているとつくづく感じる」と中濱さんは、そのようにおっしゃっていた。
現在、長浜教区第20組のホームページに、YouTubeチャンネル「真宗道場」の様子を投稿しており、教区や宗派の垣根を超え、多くの方々に教えが届くように組全体で盛り上げようと工夫されている。
時代がどれほど変わっても、“真実の教えを伝え続けるために” まだまだ出来ることがある。そう教えていただいたように思う。
(長浜教区通信員 野村顕俊)
◆真宗道場Youtubeページ
https://youtube.com/@user-he8qo8ks1j
◆真宗大谷派長浜教区第20組ホームページ