2023年5月27日(土)、Zoomオンラインにて「お寺で活きる傾聴セミナー」が開催されました。橋本 真 氏(企画調整局参事・認定臨床宗教師・臨床スピリチュアルケア師)を講師に、傾聴とは何か、キュアとケアの違い、感情を聞くということはどういうことか、を主な内容として行われ、7名の方が参加されました。
まず初めに、お寺がその力を発揮してきた要素には、コミュニケーションの場としての力があり、それは人と人の一つ一つの対話の営みが背景にあるということが示され、教化の目的は「感の人の誕生」であること、そして、人が本当に聞いてほしいことは感情であるということを踏まえたうえで、まずは自分自身が人の情動に目を向けることができるよう、相手を受容しながら聴いていくための方途を学んでいきます。
セミナーの後半には、ワークの時間も設けられ、普段あまり意識することのない自分の情動にフォーカスを当てようとするワークに、参加者は苦戦しつつも、感情を聞くことの難しさを身をもって体感できる時間となりました。
またワークを通して、無意識に評価的思考をしてしまう自分の話の聞き方が浮き彫りになり、改めて日常生活においての話の聞き方について省みる機会ともなりました。
セミナーを終えて印象に残っているのは、「痛みもその人のかけがえのない人生の一部」という言葉です。普段私たちは嫌なことや辛いことがあれば、それを早く消し去ってしまいたい悪いものとして、自分に対しても相手に対しても対応してしまいますが、その痛みも、楽しいことや嬉しいことと同様に、人生を形づくっていく一部であると知ることができたことは、今後出会っていく色々な方々の話を聞いていく上で、一つ大事な意識付けになりました。
苦しいことも悲しいことも悪いものだと自分の価値観で評価をし、悲しみや苦しみにとらわれずいつも通りに戻ってほしいという一心による「早く元気になって」「そんなこと忘れて楽しくいこうよ」などの声がけは、痛みを感じているその人自体を否定することにもつながるのではないかと思います。その痛みを聞いて感情を受容していくことこそ、本当にその人を存在から受け止めていくことにつながるのでしょう。
人と人との関係が希薄になってきているといわれる現代社会において、人の感情を聴いていこうとする力は、特に人の集まる場であるお寺において求められるものだと感じます。傾聴の技術を携え、情動を繊細に感じ取れる人の誕生が、これからの教化においても大きな役割を果たしていくのではないでしょうか。
(記事は参加者Kさんにご執筆いただきました)