[お寺で執り行うお葬式]



今や全国各地に葬儀会社の葬儀場(セレモニーホール)があり、感覚として“葬儀を行うのは葬儀場(セレモニーホール)“という認識になってしまっているように思います。


遺族にとっては、会場準備や段取りなど多くのことは葬儀業者がやってくれて、手間がかからない。また、葬儀にもさまざまなプランがあって、遺族の意向に合わせた規模でサービスを提供してくれる。寺院側にとっても、衣体や持ち物等の準備だけで後は葬儀屋がやってくれる。葬儀会社として業が成り立ち、すでに深く浸透していることは日常的にテレビCMを目にすることからも明らかなのだと思います。
そんな認識の中、寺院で葬儀を執り行う取り組みをされているお寺があるとのことで取材させていただきました。それが滋賀県米原市、伊吹山の麓の自然豊かな集落にある柳岸寺です。


「もともと葬儀は門徒さんの家で執り行っていましたが、昭和の終わり頃から家が現代住宅になってきて棺が出入りできなくなり、家で葬儀することが難しくなってしまいました。それならば寺院で行えばいい、と思いまして…」と語る住職。縁のあるところで縁のある人たちが故人を想うことで、つながりを大切にできるとのこと。「残念なことに、最近はSNSやインターネットの普及で、親子や地域のつきあいが段々と薄くなって“損得ばかりを問う世の中“になってきました。このように人間の心が貧しくなってきたのは寺の風景化、継承がうまくいっていないことも原因だと思うんです。寺を風景にせず、人が集まり大切な教えを聞く場所にしていかなければと思っています」。


工夫されている点をお聞きしたところ、門徒さんには『夜伽用の布団だけ持ってきてください』と伝え、あとは寺と庫裏にある場所や物を全て使っていただけるようにして、門徒さんの手間がかからないようにしているそうです。また、葬儀にかかる費用について、門徒会計に歳入することで、外に流出せず循環的かつ持続可能な仕組みとされています。さらに、継承がうまくできるよう、「葬儀の手引書」を作成して毎年門徒総会で共有されています。


門徒さんからは「馴染みあるお寺さんで最後の別れができて良かった」「継続してほしい」との声をいただいており、これからも続けていきたいとのことでした。


お寺で葬儀を執行することは苦労も多いように思いますが、住職は全く大変でないように語っておられました。「人と地域をつないで、よりどころとなる場所としてのお寺を維持していくこと」これは寺として、本当は当たり前にすべきことなのかもしれません。

[宿坊として]



また、柳岸寺では「宿坊」もされており、全国各地の高校生を3泊4日で受け入れるという取り組みもされています。きっかけは、滋賀県の教育委員会から体験学習として受入先の依頼があったことがはじまりであったそうです。


仏教と馴染みのない高校生がお朝事とお夕事、鐘撞や掃除などをとおして、お寺の生活を体験してもらい、帰りの際に必ずお念珠をお渡しされるのだという。体験された生徒の家族からは「礼儀や生活態度が良くなりました」「正座ができるようになりました」と感謝のお手紙が届き、これも一つのお寺の役割と感じると住職は語られました。


寺を風景化させず大切な教えを伝えていくためのつながりを創る。取材をとおし、また一つお寺の大切な役割を教えていただいたように感じます。


(長浜教区通信員 野村顕俊)