光の中を歩いている時、いつもちょっと(かげ)のことを思ってほしい。
陰の中を歩いている時、光の世界があることを信じてほしい。
             あまん きみこ(『同朋新聞』2016年4月号表紙より)

明るくわかりやすい案内チラシ
明るくわかりやすい案内チラシ
子ども食堂、フードバンクを始めたきっかけ

秋田県能代市にある浄明寺に伺いました。
ある日坊守さんは、子どもの貧困やフードロスを取りあげたテレビ番組を目にされたそうです。

「もしかしたら、私の周りにも食料を必要としている子どもがいるのかな?いるならウチにくれば良いのに…」

さらに、お寺へ

「昨日から何も食べていないのです。何か食べ物をいただけないでしょうか」

と話す中年男性の突然の訪問。

お寺に嫁いでから、米をはじめ、いただく食べものの多さに驚いたと話す坊守さん。家族だけでは全て食べきれないと思うこともしばしば。
そこでフードバンクや子ども食堂を開くことを思い立ち、始めるにはどう進めれば良いのか、なにを準備すればいいのか、まず、市の保健所へ相談されたそうです。

子ども食堂を始めるには、衛生面をはじめとしたいくつかの条件があります。そのひとつとして、講習を受け、「食品衛生責任者」の資格を取得されました。(スタッフの中に調理師免許か食品衛生責任者の資格を持った人が1人いなければなりません。この基準は市町村によって違いがある場合があります。)

食事をつくるボランティアスタッフの皆さん
食事をつくるボランティアスタッフの皆さん
子ども食堂

子ども食堂のスタッフは5~6人で、坊守さんが自分で声をかけた方や、市の社会福祉協議会のボランティアセンターのスタッフの方などです。去年の夏休みから始められ、学校の長期休み期間にあわせて、計6回開催されました。近くの小学校にお知らせのポスターを貼り、市で運営している母子生活支援施設で暮らす親子には直接伺い案内されました。参加対象は“子どもも大人もどなたでも”。

秋田県は、食料自給率が高いにもかかわらず、栄養失調死、餓死者数が多いという問題を抱えています。「この背景には人間関係の希薄さもあるのでは?」と坊守さんはおっしゃいます。

現代社会は子どもの貧困とともに、子どもの「孤食」についても心配事のひとつですが、親も親戚も近くにはいるが頼れない。人様の迷惑にはなりたくない、という方が多くおられます。「『してあげる⇒してもらう』ではなくて、お米や野菜をくださる方が居て、料理するスタッフがいて、子どもたちがいて、一緒に遊ぶ地元のおじさんがいて、ついでにご飯があってみんなでその場を過ごす。そういう場所があってもいいんじゃないかな!」という坊守さんの思いが、子ども食堂に込められていました。

子ども食堂当日のスケジュール&メニュー表
子ども食堂当日のスケジュール&メニュー表
お寺でフードバンクを始めたきっかけ

浄明寺では、子ども食堂と共にフードバンクも行っています。フードバンクとは、「食料銀行」を意味する社会福祉活動です。まだ食べられるのにさまざまな理由で処分されてしまう食品を、食べ物に困っている施設や人に届ける活動です。

浄明寺で始めてみようと思ったそのきっかけを伺いました。

「お寺だから信用してくれる方がいるんじゃないかと思って。わたしじゃなくてお寺ね!」

と坊守さん。

お米や野菜等は、全国各地から送ってくださる方だけでなく、月参りに伺った際に「子ども食堂で食べてー!」「フードバンクに持って行ってー!」と持たせてくれる門徒さんも沢山いらっしゃるそうです。

「秋田県にはこういったフードバンクを行っている団体がいくつかありますが、今現在能代市にはフードバンクを行っている団体は他にはなく困っている方から遠い、というのも開催理由のひとつでした」

と話されました。

集まった食材は子ども食堂開催日に、メニュー表で『○○さんの○○です』と紹介され、作った人を思い浮かべながらみんなで感謝をしてご飯をいただいています。浄明寺子ども食堂は、子どもはもちろん、大人にとっても大事な食育の場となっています。

お届けした1世帯分のある日の1回分の食料
お届けした1世帯分のある日の1回分の食料

これまでに64世帯、440kgの食べ物を支援してきました。

「フードバンクは生活に困っている人の根本的な解決にはならないけど、今日食べるものがないという人の少しは役に立てているのかな?できる限り長く続けていきたい」

とお話し下さいました。

(奥羽教区通信員 粟津由美子)

奥羽教区通信員浄明寺HP

浄明寺フードバンクホームページ
フードバンクの活動や子ども食堂の様子が詳しく掲載されています!