加茂ブロック(岡崎教区第27組・第28組・松平組・第30組)は愛知県豊田市東部の山間エリアで、国の指定する過疎地域を含んでいます。周辺の生活状況の変化と将来の不透明さに不安を抱いている坊守さんも多くおられることから、今回、お寺を取り巻く環境を整理しながら、今後のお寺の活動について考えようと学習会が開催され、18名が参加されました。加茂ブロックの環境整理から見えたこと、また、ワークショップを通して参加者が発見したことをご紹介します。
開催:2019年5月13日(月)  会場:豊田市 皆福寺岡崎教区 加茂ブロックでの開催
◆人口統計・教勢調査資料で状況を再認識

午前中は統計資料の学習と外部環境分析のワーク。まずは豊田市の人口動態・特徴を見てみます。
豊田市の人口は約42万人、町村合併によって自動車産業の拠点である都市部と山村地域を併せ持ち、現在、市全体の人口は微増していますが、山村地域の人口は急速に減少。今後は団塊世代の後期高齢化により、高齢化率の上昇と共に人口は自然減、特に山村地域の人口減は深刻です。(下図豊田市の東部が山村地域)
地図
人口流動については、首都圏への転居よりも、中京圏(名古屋市及び近郊都市部)への転居の方が多い傾向。ただし、比較的近距離への転居でも、お寺とご門徒との関係が途絶えてしまうことが、宗派の教勢調査で明らかになっています。

岡崎教区の中でも、加茂ブロックは寺院基盤の揺らぎが増大しています。一方、山村地域ならではの強み・魅力もあります。豊かな自然に恵まれ、四季を通じた観光資源や農産物があり、また、お互いに助け合う暮らしの知恵や伝統文化を継承していることなどです。

加茂ブロック

 

◆ワークショップ 「ファイブボックス(5つの箱)」

今回のワークショップは「ファイブボックス(5つの箱)」を使って外部環境分析を行いました。

ボックスの中心にお寺を置き、外側の大きなボックスに、①社会変化(政治経済・ライフスタイル・技術など)を書きます。

内側の4つに分かれたボックスには、②お寺界(宗派・他寺院)、③生活者(門信徒・地域住民)、④他宗教、⑤企業・サービスという環境を分析するものを振り分け、書いていきます。

お寺を取り巻く環境がどのような状態か、その環境はどのように変わっていくのかという全体像を具体的に把握し、機会(チャンス)脅威(ピンチ)を抽出することが目的です。

5ボックス

ステップ1 グループに分かれ、模造紙に枠線を書き込む

ステップ2 リーダー(司会者)を決める

ステップ3 お寺の活動にとって、機会(チャンス)になることをブルーの付箋、脅威(ピンチ)になることをピンクの付箋に書き出す(※色を間違えないように)!

ステップ4 書き出した機会と脅威の理由を説明し、付箋を5つの箱に分類、張りつける

ステップ5 分類した変化の様子を俯瞰し4年後の未来を想像した時に、特に注目すべきと思う環境の変化を話し合いながら3つ挙げ、理由と共に発表する

 

脅威(ピンチ)

◎高齢化による空き家の増加・少子化。
◎一人暮らしや家族葬の増加・墓じまいで、地域の関係が切れていく。
◎次世代の方が家の宗旨・所属寺を知らず、葬儀を業者に依頼し、寺との関係も途切れる。

機会(チャンス)

◎人と人とのつながりが希薄になるからこそ、インターネットやSNSを活用してご門徒や次世代の方に情報を発信することが大事。
◎お寺は仏の教えがあり、葬儀社ではない。真宗の教えは生きることに関わる宗教であって、そこに魅かれる人がいて、関心のある人がいる。
◎寺での葬儀・法事は増えている。よって、落語会やコンサートなどで気軽にお寺に来てもらうきっかけを作り、そこから教えに触れていただくことができる。

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◆お寺側が次世代と出会うチャンスを逃している!?

午後は、次の点を考えました。

・お寺を求めているのは誰?

・その方は何を求めている?

・その方に伝わる教化活動は?

・真宗のお寺が大切にしてきたものは何か?

真宗教団連合の実態把握調査などによると、

・宗教に求めること → 「先祖の供養」・「心の安らぎ癒し」

・お寺・僧侶が大切にすべきこと → 「丁寧な葬儀や儀式の執行」・「私欲や不正がなく謙虚であること」

・お寺へ行く目的 → 「お墓や納骨堂へのお参り」

という回答が多数です。

一方、お寺へ行く目的では、お墓や納骨堂へのお参りの際に、「僧侶やお寺の者との接点がない」と回答されています。つまり、お墓参りでご門徒はお寺に来ているのに、お寺の側が次世代の方々と出会って話すチャンスを逃しているという事実があることが見えてきました。 DSC01507 4

◆過疎地域寺院での教化の可能性

過疎地では、お盆やお正月などの帰省シーズンに、普段は離れて暮らすご門徒がお子さんと一緒にふるさとに戻って墓参りをしています。帰省シーズンのお墓・納骨堂参りの時こそ、若者や子どもたちが教えにふれる最大のチャンス。この時期を見過ごすことなく、次世代とのご縁をつなげる丁寧な関わりとアプローチを継続することで、過疎地域の教化の可能性を見出すことができます。

お墓参り絵
除夜の鐘絵
◆真宗のお寺が大切にしてきたもの

真宗のお寺が大切にしてきたものとは、そのお寺を支えている人とそのつながり。本堂や行事などは目に見えますが、お寺を支える根っこの部分はあまり目には見えません。お寺の根っことは、ご門徒や地域の方々の力やつながりです。それがそのお寺にしかない独自の強みであり、それを最大限に引き出すことがお寺の活性化につながります。

また、お寺は仏法聴聞の場。

聴聞の「聴」はこちらから能動的に聴くこと。つまり、目の前の人の声に耳を傾け、丁寧に謙虚に受け止めるということです。そうすると向こうから大切なことが聞こえてきます。それが「聞」です。

過疎だからこそ、目の前の一人ひとりとの対話が大切になることを互いに確かめ合う。そのことが実践できた学習会の時間になりました。

(寺院活性化支援室 過疎・過密地域寺院支援)