寺院活性化支援員を派遣して、お寺の現状や課題、要望をていねいにお聞きし、寺族と門徒と一緒に教化の取り組みを考える〝寺院活性化支援室 過疎・過密地域寺院支援”

今回は「お寺と地域」「新たな視点を得る」をテーマとし、寺院活性化支援員の学びのために山口県周防大島町沖家室島の泊清寺(浄土宗)にお伺いしました。また、周防大島町の職員・集落支援員の方々にもお話を聞きました。(2019年11月12-13日)ダウンロード

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山口県周防大島町は、瀬戸内海に浮かぶ本島の周防大島と、その周囲の5つの有人島、25の無人島からなるなり、人口16,132人(2019年4月現在)で、瀬戸内海で淡路島・小豆島に次ぐ3番目に大きな島です。明治時代には、周防大島より3,913人にも及ぶハワイ移民があり、瀬戸内のハワイと親しまれ、いまも交流を行っています。
1976年には、島の念願であった大島大橋によって柳井市と繋がり、1983年には沖家室大橋によって沖家室島と繋がりました。沖家室島は民俗学者:宮本常一氏、作詞家:星野哲郎氏の故郷です。
この沖家室島は、かつては島から外に働きに出た人などが大勢帰省し、普段の10倍以上の人口となることから「盆に沈む島」と言われ、明治時代には人口3,000人を超え日本一人口密度の高い島だったそうです。今では人口137人(2015年国勢調査)高齢化率70%を超え「高齢化を先取りする島」、そこに住む高齢者たちはとてもいきいきと暮らしているため「大往生の島」とも呼ばれています。
今回、お話を伺ったのは泊清寺住職 新山玄雄さんです。
※泊清寺さまとのご縁は、1998年蓮如上人五百回御遠忌法要『悠久の時の中で』を周防大島で撮影したことによる。
 
【地域の中のお寺・地域のこととお寺のことは切っても切り離せない関係】
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★雇用の創出
沖家室島に一島一カ寺 常念仏道場・参勤交代の本陣であったお寺。
先代の新山晃雄さんが住職になられたとき(1946年)、ある檀家さんから「あなたも檀家からもらうことばかり考えず、与えることを考えてはどうですか」と発言があった。それから、「かむろ製作所」という工場を建てて島に雇用を創設した。
 
★沖家室大橋をつくる
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新山玄雄さんは、1975年に島へ戻ってこられて住職に就任されました。
お寺や沖家室島のことを地域や地域を出られた方に伝える『時報 潮音』(現在2000部発行・1000部郵送)そして、島を出られた方とのつながり合う「かむろ会」(東京・関西・広島・宇部・ハワイ ※住職が現地に出向いていく:大谷派の離郷門徒のつどい)、お寺を場所にした文化活動(講演会、コンサート、芝居、落語、狂言)、かむろシーサイドミュージアム周防大島郷土大学、など協力されます。
そして、1977年から自治会長を勤められ、沖家室大橋をかけることに尽力。その後1983年、町議会議員になられました。
沖家室大橋について、周防大島出身の作詞家・星野哲郎さんは、「高齢で過疎の島といわれていますけれども、島の外に出て働いている人々にとっては、ここは本当に母なるふるさと、母の島である。やはりこの橋の上にですね、目には見えませんけれども、この橋を守って、その橋が大きく世界の果てまでものびるように努力しておられる新山さんの地道な努力に対して、私も島を出た一人として、どうかいつまでも続けてください、頑張ってくださいと申し上げたいと思います。」と述べられたそうです。
精力的に地域の活動をしてきた理由には、地域崩壊・消滅への強い危機感があった、「誰もが安心して老いを迎え、病となり、死んでいける町を作りたいと思った。」とのこと。
 
★お寺の本業を疎かにしない
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お話をお聞きしていると、どうしてもお寺以外の活動に目が行ってしまうのですが、本当に大事なのは「お寺の本業を疎かにしないこと」だとおっしゃられました。
【お寺の役割】
●念仏道場(一、掃除 二、勤行・年中行事)
●コミュニティーの場(文化交流・情報・生涯教育・防災・福祉・よろず相談「喜びも悲しみも檀家とともに」
●他宗派の団参・グループ参拝
●各種研修会の開催「ふるさとのお寺が元気だと、私たちも元気になります。誇りに思っています」
こんなことが挙げられるとのこと。
 
あらためて振り返ってみて思うことは、
・丁寧にお寺や地域のことを伝える寺報は、今とこれまでの歴史やルーツを辿る道標となっていること(今後も記録として役に立っていく)
・地域の必要に応えて身を動かし役をしてきたこと
・お寺としての本業を疎かにせず、関わる
・寺と人との信頼関係と情報、それがもっともっと今後、生かされる可能性がある
・無理してやらない。そこで生活している方がいて、歴史や習慣がある
・そこにいる方の持っている力を生かす、つながりでお願いしていく
こんなことに可能性が見いだせるのではないでしょうかと述べられました。(重複あり)
 
その他、周防大島役場の方や集落支援員の方々にも頼りになるお寺、頼りになる新山住職。これからも何か目新しいことに飛びつくのではなく、お寺の本業を大切にして地に足の着いた取り組みをしていきたいとおっしゃられました。IMG_1997
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人が減った、高齢化したからといって故郷を思う心、その地の魅力が減っていくわけではない。魅力に思い訪れる人がいて、こうなったらいいなと行う人とその仲間がいる。
自分以外の方を大事に思い取り組んでいらっしゃる。ニコニコと真剣にすぐに答えが見つからないことに取り組んでいる。他社のために、そして心が感じて動くこと活動をされているなと感じました。

「ゆたかに、いきるを考える」がコンセプトのWEB版地域情報誌「ゆたいき

山口県周防大島町沖家室島の情報サイト「かむろDay’s

寺院活性化支援室では、お寺の教化活動を一緒に考えます。

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