東日本大震災による、お寺を取り巻く環境の変化
東日本大震災の津波による甚大な被害に遭った若林区にある海楽寺。3年と半年が経った今でも、寺院周辺には数えるほどの人しか戻ってはいません。水田ができ米作りは戻ってきましたが、広大な大地に一昨年の7月にリフォームを終えた本堂 と庫裡だけ佇んでいる様子が違和感と災害のすさまじさを物語っています。昼間は農業を営む人の姿が見られますが、夜になると本当に寂しい。小学校も移転し、子どもたちの姿も見られなくなりました。海楽寺の門徒のほとんどは内陸に移転して暮らしています。中にはまだ仮設住宅に住んでいる人もいます。
大友雄一郎住職の話によると、門徒の中には津波の恐怖が抜けず、お寺のある周辺に戻りたくないとお寺から離れていった人もいるようです。そういう中で一昨年(2013年)に親鸞教室によって生まれた同朋会は寺にとっても大きかったようです。バラバラになった門徒にとっても互いに近況を語り合えるいい機会になっているとのこと。
親鸞教室を始める
海楽寺では先にリフォームを終えた庫裡で親鸞教室を始めました。まだまだ落ち着かない状況にあるにも関わらず毎回30人ちかくの人が集まってきたそうです。親鸞教室の内容は講師の法話とグループに分かれて座談というオーソドックスなスタイルでしたが、みんな自然と震災後の生活が話題になったようです。同じ地域にある德照寺住職の佐藤和丸さんをはじめ、同じく津波の被害に遭った陸前高田市の本称寺住職の佐々木隆道さんや原発事故によって避難生活を余儀なくされている浪江正西寺住職の小丸真司さんらを講師に招きました。
「バラバラになった人びとがもう一度共に生きるということを見い出せるような場にしたい。同じ被災をした人にも気持ちを素直に語ってもらいたかった」。また、昨年の同朋会では、被災地を150箇所以上もまわり人びとにジャズの演奏を披露してきたサックス奏者の安田智彦さんも門徒の伝手で招くことができました。
ハウス(本堂)をホーム(居場所)に
しかし大きな課題を残しているとも。「震災でコミュニティが失われた。同じ地域に暮らしていた人たちが離れ離れになった。そうした方々を互いにつなぎとめる場としてお寺をどうしていくのか。つながりは法要や同朋会だけになる。家や家族を失った方に何を伝えることができるのか。みんなのおかげでハウス(本堂)は建った。これをホーム(居場所)にしていきたい。そのためにどういう話題だったら語り合えるのか、同朋会のテーマです(大友住職)」。