組単位で徹底して行っている身元調査お断りの学習会
久留米教区では、教区内の寺院・教会における身元調査のお断り・過去帳閲覧禁止運動の徹底を図っており、組ごとで学習会を行っています。寺院・教区で法務を営む者はご門徒の住所や家族構成等の様々な情報を知りうることから、ご門徒の個人情報を護らなければならない立場にあります。これまでにも個人情報がネット等で無断で開示され、それが差別問題に発展するケースが社会問題にもなっています。過去帳や門徒名簿が、身元調査のみならず、いずれの目的にも利用されてはなりません。
教区教化委員会では、この学習会実施に対し、講師やスタッフの派遣、そして経費の一部を補助する形で組を支援しています。
2月18日に筑前西組で開催された学習会(会場:慈廣寺/島津道之住職)には、組内から住職10名、坊守を含む寺族6名、門徒6名が参加しました。特に身元調査に来る調査員等と対面することが多くなるのは常にお寺で来訪者の接待を行う坊守であろうと、この学習会への積極的な参加を呼び掛けると同時に坊守研修会でもこの話題をテーマにしているようです。
学習会にはメインの講師として部落解放同盟筑後地区協議会の書記長である組坂幸喜氏が招かれました。司会進行は組教教化委員会の部落問題・靖国問題部会を担当する4人のスタッフが担当します。そのスタッフによる勤行と開会の挨拶の後、まず組内住職から「発題」という形で問題提起の発表があります。これはただ単に講師の話を聞くということに留まらない、組が主体性をもってこの問題を聞いていくということの表現として、宗門に身を置くものとして話すということを心掛けて発表するようです。実はこのスタイルは、杉山寧駐在教導が北海道教区赴任時代にやっていた経験を活かしたようで、なるほど大谷派僧侶としての考えや寺の実状、宗門の解放運動の歴史にふれることで、その後の講師の話も深まるような気がしました。
久留米教区の都市教化の最前線
同組は福岡市とその西に隣接する糸島市で構成されており、九州一の人口過密化が進んでいる福岡市(約150万人)と福岡市への人口流出で過疎化が進む糸島市(約10万人)という対照的な土地を包含した組です。組の課題も都市教化にあるようです。
門徒の代が替わると、次の世代に門徒意識が引き継がれていないことが露呈してきました。法事を勤めても親類が集まらなくなったようです。また葬儀に隣近所の人たちに伝えなくなったとも言います。住職とのかかわり合いも減ったと言います。
人口の出入りが激しくなってきた福岡市で同組はどのように取り組むのか。大谷大学88夏期講座と提携し、会場を寺ではなく市内の会場を借りて仏教講座を始めました。また、この組は「聞思の会」という僧侶の勉強会が数十年伝統されています。かつては仏説無量寿経を幡谷明氏(大谷大学名誉教授)、そして観無量寿経を宮城しずか氏(九州大谷短期大学名誉教授・故人)の教えを受け、現在は正信偈をテーマに古田和弘氏(九州大谷短期大学名誉教授)に年間数回ではあるが一日みっちりと学んでいるのです。このような取り組みの一方で、都市部に住まいを移した門徒が仏事を頼むことができるようなシステムをという声もあります。東京の真宗会館のような機能である。「そうしないと、門徒がどんどん都市部に出ていってしまった時に田舎の寺は門徒をつなぎとめられない」と危機意識を持っている住職もいるのです。
國友組長は、「とにかく組内の住職同士のコミュニケーションが大事。どのような形で組内のお寺が教化の力を発揮できるのか。組会を2カ月に1度行い、常に事業内容の成果を確認しています。若い人たちにもどんな事業にしたいかアイデアを出させ、彼らが一生懸命考え練ってきたものを組会で図るんです。若い人たちも自分たちの勉強会を設け(若鸞会、若坊守会)、話し合いができる場を主体的に作っているようです。そして組としても若い人の豊かで我々とは異なった発想や視点を期待しています」。筑前西組は全国的に見てもかなりの予算を教化事業に注いでいることが伺えます。真宗入門講座や宗祖親鸞聖人講座、青少幼年教化等多岐にわたっており、また組内の住職同士の学習会も自主的に行われているところもあるようです。今後とも注目すべき組と言えそうです。