伝道掲示板 
本当の別れは会えなくなることではなく、
忘れてしまうこと
(広島平和記念式典 令和三年度平和への誓い)



「ずっと掲示伝道をしたかったんですよ」。清水住職は言われました。当初は山門に張り出す形で始めましたが、お寺の世話方さんに相談したところ、世話方さんが中心となって寄付が集まり、4年前に現在の掲示板が設置されました。


掲示板と清水住職

掲示板は通学路沿いで、町民会館の向かいにあり、町の方の目によく留まります。夏休みには子どもたちがラジオ体操で集まるので、子どもの興味を引くような掲示を考えます。去年の夏は、アンパンマンのイラストを娘さんに描いてもらい、やなせたかし氏の言葉を載せました。小さな子は絵に惹かれ、「これ、なんて書いてあるん?」と尋ねるので、親子で一緒に掲示板を見ます。仏教の教えにふれる機会が少ない若い世代の方も、何かを考える布石になるといいなあと思い、工夫を重ねているそうです。


掲示板は、年に10回のお講の日程を伝えるという役割もあります。お寺のある中代町は世帯数が60軒余り、10班に分かれています。ちょうどお講の回数と同じで、班が持ち回りでお講の当番をします。当番をすることで、年に1回はお寺に来るきっかけになります。また門徒でなくてもお寺の世話役を引き受ける方がいるなど、町全体が門信徒としてお寺を支えています。「昔から町の方に支えられていることが大変有難いことです。そのお返しというわけではないけれど、掲示板には少しでも関心を持ってもらえるようにと思って言葉を選んでいます」と清水住職。見た人が「ほんとや、ほんとや」と頷くような、平易だけれど気づかされるような言葉を、新聞や本、インターネットなども活用して、日々探されています。仏典から引用する場合も、普段の生活につながるような言葉をつけるなど工夫しています。



夏休み期間中は言葉にイラストを添える取り組みも

これまでに、反響があったり、印象に残っている数枚の掲示を見せてくださいました。

掲示板の最初の言葉は、「佛の願いはそのまま 私の願いはわがまま」。インターネットの掲示伝道のサイトでたまたま見かけ、わかりやすく、また考えさせられる内容だったので、最初の言葉として選んだそうです。


印象に残っている過去の掲示

永六輔氏の言葉もあります。清水住職が東日本大震災のボランティアに向かわれた際、「してあげる」というような対応はしたくなかったそうですが、永六輔氏の本『「()()」の仕事』の中にあるこの言葉に自分も教えられたということでした。町に根付いたお寺として、これからもわかりやすい言葉で掲示伝道を続けていきたい、と語られていました。



(大聖寺教区通信員・畠山三和子)

『真宗』 2023年2月号「お寺の掲示板」より

ご紹介したお寺:大聖寺教区第1組恵照寺(住職 清水 惠)
※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。