糸と針で布を装飾する刺繍は、世界各地で古くから行われ、様々な場所を鮮やかに彩ってきました。

日本で刺繍がいつから行われるようになったのかは定かではありませんが、六世紀に仏教とともに中国から高度な刺繍技術や仏や浄土などを刺繍した「繍仏(しゅうぶつ)」が伝わり、七世紀には奈良の中宮寺の「天寿国曼荼(てんじゅこくまんだ)羅繍帳(らしゅうちょう)」などが製作されています。

平安時代になると、貴族の装束を華やかに彩るため、京都で刺繍の技法が発展し、その後各地に広まりました。特に、加賀(石川県)には室町時代初期に仏教とともに刺繍が伝わり、刺繍の打敷や袈裟などが多く作られました。

そして、江戸時代には民衆にも広がり、特に江戸では相撲の化粧廻(けしょうまわ)しや着物の全体に刺繍をすることが流行し、生活を華やかに彩りました。現在もこれらの地域には京繍(きょうぬい)加賀繍(かがぬい)江戸刺繍(えどししゅう)の技法が伝わっています。

東本願寺の打敷の刺繍は、天人、鶴、龍、鳳凰、麒麟(きりん)獅子(しし)迦陵頻伽(かりょうびんが)、蓮、藤、牡丹(ぼたん)など様々で、江戸時代の打敷を法要などで荘厳する場合もあり、受け継がれてきた伝統を垣間見ることができます。

協力:柴田法衣店(公式HPこちら)

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