2024年3月8日、東北教区社会部門主催の性差別に関する学習会として「押し掛け座談会」が開催されました。教務所を会場にすると足を運ぶのが難しい人たちのために、こちらからお寺や組に足を運んで座談会の場を作りに行こうと発足したのがこの「押し掛け座談会」という取り組みです。今回の会場寺院は、岩手県大船渡市に境内を構える気仙組長安寺。
開会行事の後、社会部門委員の小丸洋子さんによる『おらほのジェンダーカルタ』の説明と、長安寺婦人会の会員で東北教区選出の参議会議員である佐藤多恵子さんから問題提起がありました。女性の少ない教化委員や参議会議員であるというお立場から、ジェンダーに関する差別と言う難解なテーマを、私たちが属する社会に散見される「女性らしさ」や「男性らしさ」と言う観点からわかりやすくお話しくださいました。
短い休憩の後、グループに分かれてカルタで遊んでもらう時間がやって来ます。最初は「見ているだけで良いです」と気後れされていた人も絵札が減ってくると真剣に手を伸ばすようになりました。周りから聞こえてくる笑い声や畳を叩く音からも、純粋にゲームとして楽しんでいただけていたように感じます。
空気がほぐれた所で座談会が始まると、皆さん読み札の言葉に目を通しながら感じられたことを話されていました。
集まった人の価値基準によって同じ札でも引っかかり方が変わる中で、今回の座談では家庭や世代、時代性や地域性といったさまざまな視座から幅広く性差という問題を考えていただいたようでした。共通する話題としては、ジェンダーへの感覚はその人が身を置いてきた環境によって隔たりが生じていくものであり、このギャップを埋めていくためにはコミュニケーション、特にも違いを認め、互いに理解を深めていくような対話が肝要だろうということだったかと思います。
小丸スタッフの閉会挨拶の中で「ひとりひとりがその人のまま輝ける世界が浄土であり、私たちも何かに縛られずに輝いていていけるようなきっかけが掴めるような会でありたい」という言葉がありました。カルタをきっかけに普段の生活の中の問題を考えていくという面ではこの会の趣旨は果たされたと実感しています。
私たちは日常で何気なく使っている言葉や習慣の中に偏りが潜んでいるという事実を見過ごしてしまいます。それまで気にしていなかったことから問われていく、このこと無くして性差別のような社会に定着する問題に関わっていくことはできません。誰かのための一歩となるように、「押し掛け座談会」という活動を続けていきたいと強く感じました。
〇『おらほのジェンダーカルタ』について
かつて「押し掛け座談会」で使われていたカルタは『女と男とのあいあうカルタ』という東本願寺の女性室で作られ、女性問題と男性問題それぞれについて表現されたものでした。
しかし、時代が移り変わる中で性的マイノリティが社会問題になり、性差別という言葉が示すものが男女間の性差に止まらなくなりました。加えてそれまでのカルタには寺院視点の言葉が特に多かったこともあり、あらためて身近にある性差別の問題を私たちの言葉でとらえ直してみようという意見が出ました。
「おらほの」という言葉は「私たちの住む地域の」という意味の東北地方にある方言であり、現代における人と人との問題を考えるきっかけとなることが、このカルタ作成に込められた願いです。
東北教区社会部門では「押しかけ座談会」をとおして語らいの場を開く活動を継続すると共に、カルタの貸し出しも行っています。開催方法、カルタの貸し出しにご興味のある方は教務所までお問い合わせ下さい。
(東北教区通信員 藤原了)
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