光泉寺は生駒山を背にした東大阪市に位置する菱屋西という所にその門を構えている。
秋の一日、光泉寺では「ほうおんこうこども会」が開催される。2008年に逝去された前住職の奥田芳正さんが30年近く前から始められたのがその始まりであった。前住職さんは地域の子ども会の立ち上げにも大いに力を注がれ、お寺と地域の垣根を超えた関係を大切にされた。そんな中、報恩講の後のお楽しみ会として「ほうおんこうこども会」が始まった。「正信偈」のおつとめ、住職のお話、その後は紙芝居や絵本の読み聞かせ、また人形劇などさまざまな催しで賑わう。そのお楽しみ会は、前坊守の奥田淑子さんの「シロバナたんぽぽ文庫」という子ども文庫活動が支えとなっていた。子ども文庫活動の仲間の手助けもあり、30年続く現在も毎年のようにお手伝いしてくださっている。続けて来たのではなく、気がつけばさまざまな方々のおかげさまで続かせていただけたと振り返られる。
そして「たいしたことはできていません」と恐縮して語られる前坊守さんが、思い出したように「〝子どもたちがお寺の門をくぐったという覚えがあるだけでいい〟という姿勢に立った前住職のその思いのままで来ています」と当初の思いを話してくださった。この言葉には思わずドキッとした。今、私たちは何か真宗を伝えたいという思いが、押し売りになってしまっていないか。地域とつながり、ご門徒であってもなくても、さまざまな子どもたちが足を運ぶお寺であるからこそ、そこに真宗があるように思えてきた。
現在、大阪教区教化委員会では「子ども同朋唱和講習会」として「ブットンくん」というキャラクターを作成し、子ども会の育成に努められている。現住職の奥田勢至さんは、ぜひとも今回の「ほうおんこうこども会」に来て、子どもたちと出遇ってほしいとブットンくんを招かれた。住職は「御遠忌も近づき、ブットンくんを通してかすかにでも御遠忌を感じられれば嬉しいですね」とその思いを語られる。
前坊守さんは最後にこう語っていただいた。「子ども会の活動は、ただ面白おかしいだけでなく子どもたちが豊かであってほしいです。豊かに育つとは、嬉しいことも豊かなこと、悲しいことも豊かなことですよね」と。
「ほうおんこうこども会」に脈々と流れる地域とお寺のつながり、そして豊かな心を育てたいという願い。お寺の本来の姿がここにあるように感じた。
(大阪教区通信員 廣瀬 俊)
『真宗 2010年(2月)』
「今月のお寺」大阪教区第17組光泉寺
※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。
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