真宗大谷派とアイヌ民族差別問題
1869年、明治政府は「開拓使」を設置し、積極的に北海道開拓を推進しました。それは先住民族であるアイヌの人々の暮らす「アイヌモシリ」を「北海道」と名づけ、土地とそこに住む人々を、国家権力の支配に組み込むことでした。そのため、アイヌ民族に対して、「日本人」としての文化や生活様式を押しつけ、民族の尊厳を奪いとってきたのです。
大谷派は、開拓使が置かれるより前に、政府に対して開拓・開教を願い出ています。つまり、私たち大谷派教団には、国家権力に追随して、アイヌ民族の人権を奪ってきたと言わざるを得ないような歴史を持っているのです。
このことは、1977年11月2日に起きた「大師堂(御影堂)爆破事件」で気づかされたことです。「爆破」という行為は容認されることではありませんが、そのことが露わにした宗門の非違の歴史と、それを問うことすらなかった私たちの「宗教性」を、今こそ問い返していかなければなりません。
アイヌ民族差別に関する学習資料集『共なる世界を願って』
2017年人権週間ギャラリー展シンポジウム
パネリスト:竹内渉氏、結城幸司氏、訓覇浩氏
アシリ・チェプ・ノミへの参加
1982年に復活し、第一回を迎えたアシリ・チェプ・ノミ(新しい鮭を迎える儀式)は、札幌アイヌ文化協会が中心となり、大切に育てられてきました。札幌市の中心を流れる豊平川に架かる南七条大橋上流に、道内をはじめ日本各地からアイヌ民族が集います。アイヌ民族の伝統儀式は、道内各地で地域に密着した文化伝承の取り組みとして、市民にも親しまれています。
写真「アシリ・チェプ・ノミ」
在日韓国・朝鮮人への差別問題
2023年6月末時点で、日本に3カ月以上滞在する外国人の数は約322万人となり、新型コロナウイルス感染症の爆発的増加の時期を除くと、毎年増加しています。最も多い国籍は中国で、次いでベトナム、韓国・朝鮮、フィリピンと続き、上位三カ国だけで約半数を占めています。また、その半数以上が生活の中で何らかの差別を受けたと訴えられています。
その中でも、在日韓国・朝鮮人は、日本が朝鮮半島を植民地としていた時代、日本に渡ってきた人々とその子孫になります。当時、日本国籍とされていた朝鮮半島の人々は、仕事を求めて日本に渡り、また日本も安い賃金で雇うことができるため、積極的に招き入れました。何十万人もの人々が日本で生活基盤を築いたことで、戦後も多くの人が日本に残留したのです。
ところが戦後、在日韓国・朝鮮人は一方的に外国籍者として扱われ、社会的権利も制限されることになりました。また、ヘイトスピーチと呼ばれる差別的言動、差別をあおる言動によって、人間としての尊厳も否定されてきたのです。
東九条マダンへの参加
「マダン」とは“広場”の意味です。「東九条で、韓国・朝鮮人と日本人がひとつのマダンに集い、一つになって、みんなのまつりを実現したい」という願いをもって、毎年11月に開かれています。
解放運動推進本部では、いちょうの会(ハンセン病関西退所者の会)との共催で、「ハンセン病問題に学ぶパネル展」を開催しています。ハンセン病における国の隔離政策の被害は、日本国内にとどまらず韓国・台湾をはじめとする東アジアにまで広がり、今なお、多くの人びとにつめ跡を残します。
民族や立場を超えて、共に生きる道を求めて、私たちはこの展示から歩みを始めています。
写真「東九条マダン」