岩手県盛岡市にある岩手真宗会館に今年(2014年)5月10日に人間の復興大学というちょっとユニークな聞法の場が開設されました。
大学といっても学校教育法に定める大学設置基準に基づいたものではありませんが、運営方法は、学長及び理事(10人以内)で構成されている理事会の合議によって決定されます。その理事には大谷派の僧侶や門徒に限定せず、クリスチャンや他宗の僧侶も参加し、さらには周辺に住む商店の経営者も。このように様々な人が運営に参画することによって大学の在り方の公性が確保されています。
授業は月に一度。内容やテーマ、教授の人選は理事会で決定します。一方でこの「人間の復興大学」で話をしたい、つまり教授を希望する人もいます。そういう場合はレポートを提出させ、理事会で「人間の復興」という趣旨に反するものではないか確かめるそうです。また、教授は教授会を組織することができ、講座の内容等について教授会として理事会に意見を具申することもできるようです。
もう一つ特徴的なのは、教授には給与や手当、講師礼といったものは一切支払われないことです。むしろ講義1回につき500円を大学に支払わなければなりません(いわゆる学生である参加者の授業料(参加費)は1回100円)。「語りたい、教えたいということがあるんですから生徒よりも払いなさい。逆転の発想です」と、理事の一人である岩手真宗会館館長を開館当時から続けている丸田善明館長(仙台教区盛岡組宗通寺前住職)は言います。
一朝一夕でこの大学が始まったわけではありません。岩手真宗会館、いやもっと言えば盛岡説教場という聞法の道場が地域に根付いていたからこそ実現したのでしょう。
「現代社会と人間フォーラムという月に1度の集まりは10年近く続いています。牧師さんも参加している。また、現代宗教研究所では大学の先生や元新聞記者の人とずっと研究しているんですよ」と丸田館長。
キリスト教や禅宗の人とのかかわりのあったこともあって、震災後に何をすべきなのかを共に模索することができたといいます。また、禅宗の強いこの地域で禅宗の人たちが関わることで行政もより協力的になったようです。
現在は月1回、第二土曜日に真宗会館と市内の教会や公共施設をキャンパスにして講座を開いており、多い時で30人の受講があるとのこと。
また後援会を設け、一口1000円で募集してそれを基金にしています。この基金と授業料がこの大学の運営を支えているのです。
「『いのち皆生きらるべし』が大学のスローガンです。この言葉からおのずと見えてくるものは本願成就なのです。みんなそれぞれのいのちが輝きますように。これにはキリスト教の人たちも共感してくれる。元々詩人のリルケの言葉なんですね。人間の復興とは期せずして、大震災が押し出してくれたもの。それに私たちは気づき始めた。例えば自死の問題、原発の問題。いろんな点で近代社会がもっていた非人間化というものが問い直されはじめた、これが運動となっていけるかでしょうね。震災によって今もずっと教団はうろたえ続けている。でも僕はうろたえ続けていることが大事だと思う。その状況の中で本願に対面させられているのです」。人間の復興大学のような、お寺ではできなくて、真宗会館でできることをこれからも模索したいとのことでした。
(人間の復興大学に関してはhttp:// re-human.net/collegeを参照ください)
以 上