金子よしえさんからの一言が、“ねりまこども食堂”という動きに繋がりました。
金子よしえさんからの一言が、“ねりまこども食堂”という動きに繋がりました。

「ご飯たけたー??」
「おーっけーです。」
「まだ鯛が焼けてないよー」

ボランティアの元気な声が響く。まもなく“ねりまこども食堂”のオープンである。

“ねりまこども食堂”が開店しているのは、「真宗会館」。普段は研修会等で使用される食堂も、この日だけはいつもの真宗会館とは違った雰囲気に様変わりする。子どもたちにお腹いっぱい・楽しく・美味しく、夕ご飯を食べてもらいたいという思いが詰まった食堂になるのだ。

真宗会館の食堂は、あっという間に満員御礼!夕食を楽しむ子どもたちも楽しそうです。
真宗会館の食堂は、あっという間に満員御礼!夕食を楽しむ子どもたちも楽しそうです。

この“ねりまこども食堂”をはじめたのは、金子よしえさん。ある日、NHK「クローズアップ現代」を見たのがきっかけだった。

「こんなに豊食と言われる時代に、『孤食』『こどもの貧困』とう問題があることに衝撃を受けました。夜はお菓子やカップ麺だけ。給食のない夏休みは1日2食だけという現代の日本で起こっている事実を知り、居ても立ってもいられませんでした。何か私にできることはないのか。仲間をつのってご飯を作ることくらいは出来るのでは・・・。そして、調べていくうちに“子ども食堂”という活動をされている方たちに出会ったのです。いろいろと話を聞くとまず場所が問題になることを教えてくました。」

 

子どもたちに提供される食材の多くは、ご門徒や地域の方々、金子さんの取り組みに賛同してくださった方々から寄せられたものです。
子どもたちに提供される食材の多くは、ご門徒や地域の方々、金子さんの取り組みに賛同してくださった方々から寄せられたものです。

金子さんは、お母さんの葬儀をされたことをきっかけとして真宗会館ご縁をもたれていた。そこで、まず開店場所として思いついたのが“真宗会館”だったそうだ。
真宗会館は東京都練馬の地に出来てから20数年。まだまだ、地域の施設としては認知度が低い。多くの方がイメージするいわゆる“お寺”の佇まいでもない。それでも、“寺子屋”という言葉に代表されるような「地域のコミュニティ施設」としての役割を果たそうと取り組みを進めていた。
金子さんの、地域の子どもを地域で見守り、希薄になった地域コミュニティを暖かい“つながりの場所・安心できる場所”にしていきたいという思いに真宗会館も共感して、真宗会館を会場に“ねりまこども食堂”がスタートすることになったのだ。

 

子どもたちに“食べる楽しさ”を伝えるため、美味しいものを食べさせてあげたいと、お揃いのエプロンに身を包んだスタッフの方々の意気込みが伝わってきます。
子どもたちに“食べる楽しさ”を伝えるため、美味しいものを食べさせてあげたいと、お揃いのエプロンに身を包んだスタッフの方々の意気込みが伝わってきます。

「子ども達に、食べる楽しさを知ってもらいたい。できるだけ明るい雰囲気でやりたいと思ったので、スタッフで御そろいのエプロンとキャスケットを作りました。」

ねりまこども食堂の開店が決まり、ボランティアを募集するとすぐ20名ほどが集まり、ホームページで紹介すると食材や調理器具などの寄付の品も各地から集まり、地元の「練馬体験農園」の協力も得ながら、月2回月曜日の夕方に活動をしている。

「わぁーすごい、おいしそうだねー」
「ねぇー、これ食べていい??」
「ダメー。ちゃんとこれ食べてからー」

食堂では賑やかに食事をする声が聞こえてくる。隣の仏間では、走り回る子ども達。ある時は、元美術の先生によるオリジナルけん玉教室が開かれ、子ども達がはつらつと遊ぶ。

美味しいだけでなく、栄養バランスにも優れたメニューがならんだ夕食。
美味しいだけでなく、栄養バランスにも優れたメニューがならんだ夕食。

小さなお子さんを連れこられたあるお母さんからは

「こんなに子ども達が楽しく夕食をたべて、知らない子ども達とすぐに仲良くなるのを見ると本当にうれしい気持ちになります。こんな場所がお寺で開かれてるなんてびっくりしました。私だけではこんなにバランスのとれた夕食をなかなか毎回作ってあげられません」

と語っている。

“こども食堂”は子ども達が楽しく過ごせる食堂であると同時に、お母さん達にとっても“ほっと”した気持ちで過ごせる、地域でできる「出会いの居場所づくり」の地道な一歩なのかもしれません。