【皆で担えば「できない」ことも「できる」】
岡崎別院での取り組みは、現在でも続いているが、京都教区仏教青年会の清掃奉仕活動は、2015年から同じく京都市内に所在する山科別院でも実施され、今回は、浄土真宗本願寺派の山科別院と共同して崇敬している蓮如上人の御廟所の清掃が行われた。
御廟所は、通常は施錠されていて中に入ることができなくなっており、多くの木々が生い茂り、おびただしい量の落ち葉に覆われていたが、真宗大谷派山科別院には、列座2名が常駐するのみで、法務の合間ではとても清掃することなどできない状況だったという。山科別院の北脇 隆昭列座は、「列座2人で御廟の中をすべて掃除することはとても難しく、せっかく全国から多くの方々が参拝してくださっても荒れた状態のままにせざるを得ない状況でした。今回の教区仏教青年会のお申し出は、正直ありがたいと思っています」と語られた。
【別院を支えるご門徒の参画】
また、清掃奉仕を実施することを別院の定例聞法会で告知したところ、崇敬地域のご門徒も参加された。ご門徒のお一人は、「いつも別院でご法話を聞かせていただいているのだから、せめてものお礼と思って参りました。長らく山科に住んでおりますが、御廟に入るのは初めての経験ですので、本当に楽しみです」と述べられた。
奉仕作業は、御廟を覆い尽くした落ち葉をかき集めることから始められたが、永らく堆積してきた落ち葉は、どれだけかき集めてもなかなか減らないほどの量だ。それでも、参加者たちは、ひたすらに広範囲に散らばった落ち葉をかき集める。
湿り気を帯びた、重たい落ち葉で満たされたごみ袋は、ずしりと重みがある。ご門徒に運んでいただくのは忍びないと仏教青年会の会員が「持っていきますよ」と声をかけると、「私は、毎日歩いて足腰を鍛えていますから、大丈夫です」とご門徒が笑顔で答える。後で伺えば、そのご門徒は散歩やサイクリングを欠かさずに足腰を鍛えられており、富士山にも登頂するほどの健脚とのことだった。
そして、そのご門徒は、「人生も登山も一緒ですね。登山は強力(登山を先導する山の専門家)に先導していただいて登りますが、彼らが登るペースは私たちにも遅いと思うような速度です。強力に頼らない外国人観光客は軽装備でさっさと登っていきますが、必ずといって言いほど山の途中で倒れてしまいます。酸素が薄くなる環境に徐々に体を合わせて登っていく強力に先導してもらわなかったら登れません。人生も一緒で、道を教えてくださる先生に出会って、教えをいただきながら少しずつ歩んでいく。その先生が、私にとっては仏教なんだと思うんです」と。
「御廟をきれいにして、誰もが参拝できる環境を整えよう」という願いを共にして、清掃に集中しているうちに、会員とご門徒との間にも会話も生まれ、和気藹々とした雰囲気の中で予定の時間はあっという間に過ぎていった。綺麗になった御廟を見て、誰もが「参拝される方々に喜んでいただけたらいいですね」と声を揃えていた。