金沢教区第4下組 幸圓寺では、毎月第3水曜日に、「まちのつどい場 いらしての会」を開催しています。「いらしての会」は、地域の人たちが認知症や在宅療養、介護などについて、専門知識をもった方と気軽にお話することができる集いの場として開かれています。
12回目の開催となる今回、地域の方をはじめ、ケアマネージャーや理学療法士の方など25名程が参加しました。参加は自由で何度も来られている方や初めての方など、各回で顔ぶれや人数がかわります。
当日は、住職(幸村明)さんのお話に続いて毎回恒例となっている自己紹介からはじまりました。互いの自己紹介で場が和んだところで、金沢西病院地域連携センターの大谷千晴さんから「介護保険のしくみ」についてお話がありました。介護保険は「介護保険=認知症」と誤解されているが、糖尿病など他の場合でも使うことができることを要介護度の説明を交えながらお話されました。
引き続きもたれた談話の時間には、「要支援と要介護の判断はどこでされるのですか?」「私の場合、介護保険は適用されますか?」など、身近な質問がありました。質問には、大谷さんだけでなく当日来ていた各専門家の方も一緒に丁寧にお答えされていました。
お話の内容は毎回違うそうで、これまで「認知症とは?」「認知症になった方の「食」の問題」「認知症の方への接し方」などについて話されてきました。
会の終わりにはお楽しみの時間がもたれ、坊守(忠子)さんの演奏する箏の音色に合わせて参加者みんなで歌を歌い、楽しい雰囲気でお別れしました。また、会終了後も残られる方があり、全体では話しにくいようなことを専門家の方と相談される姿もありました。
「いらしての会」のはじまり
「いらしての会」は、今年の12月で1年目を迎えます。幸圓寺で開催する最初のきっかけとなったのは、金石に住んでいた大腸がんを患われたあるおばあさんとその娘さんでした。
ある日、その娘さんが金沢市で行われた大腸がんについての研修会に参加されて、榊原千秋さん(いのちにやさしいまちづくりネットワーク代表)と出会い、おばあさんのことを相談されました。おばあさんが金沢西病院に入院していたこともあり、退院後、金沢西病院と榊原さんが一緒におばあさんの家を訪ねる機会がありました。「退院したとき地元で行く場所があるといいね」という話題になり、昔、おばあさんや娘さんと親しかった幸圓寺の名前があがりました。偶然にも榊原さんと住職の幸村さんは「仏教看護・ビハーラ学会」の活動をとおして親しかったこともあり、榊原さんから幸村さんに「金沢西病院が、老いや病いの問題をかかえる人達が集まれる場所作りをしているので、これに協力してほしい。幸圓寺でやらせてほしい」との依頼があり、「いらしての会」を開くことになりました。
おばあさんはその後入院され、一度も会に来ることは叶わなかったそうですが、おばあさんをきっかけに開かれた「いらしての会」は、地域の方々の集いの場として機能しています。
老病死の現場に出ることで生まれたご縁
住職の幸村氏は、現在、「真宗ビハーラの会石川」の会長をされています。ビハーラの取り組みを始める頃から、お寺が老病死の現場に出て行くことの大切さを感じておられたそうです。「臨終の前まで家族のみなさんは苦悩しておられる。僧侶が出て行くのはこれが終ってからで、老病死の現場から問われる機会は、なかなか少ないのが実際ではないか」と話されます。そして「お寺の内から外を見るのではなくて、自分が医療・福祉の現場へ出かけて関わりをもっていたら、老病死の現場から寺ですべきことを持ってきてくださった」と、お寺を出ることが「いらしての会」を生む縁となったことを話してくださいました。
引きこもりを引っ張り出す
「いらしての会」の参加者は、最初は10名に満たず、そのほとんどが専門家だったそうです。会を重ねるたびに参加者からの口コミでひろがって今の規模になりました。金石西地区でも核家族化、高齢化が進んでおり、老々介護の家庭や独居の方も増えているそうです。このような状況のなか、家に引きこもりがちになってしまう高齢者の方もおられるそうで、住職は日々のお参りの際、「そういった方には、いらしての会に来ませんかとお声がけするようにしています」と話していました。
「いらして」は、金石地区でさようならの代わりに使う挨拶の言葉で、「また来てね、またお会いしましょうね」という意味だそうです。「さみしいとき、つらいとき、いつでも会いに来てね」という思いをこめて「いらしての会」と名づけられています。
行政の取り組みを上手に活用する
高齢者が住み慣れた地域で安心して過ごすことができるように支援を行う行政機関として、各区市町村に地域包括支援センターがあります。金沢西病院は各地域の地域包括支援センターからの委託を受けて地域療養のサポートを行っています。「いらしての会」はこの金沢西病院の取り組みと連携して行われており、幸圓寺に金沢西病院、地域包括支援センターやその他の医療・介護事務所が協力して運営する体制をとっています。お寺だけでは難しい専門的な内容については専門家がいつでも対応できるようになっています。
金沢西病院のスタッフの方に話を聞くと「金石地区では公民館等で、いわゆる健常者の集まりが2箇所あります。それぞれの用途に応じて出かけられたらいいと思います。歩いて行ける距離のなかで3箇所こういった場所があれば、どこかに必ず行ってもらえるのではないかと思っています」。「地域包括支援センターは各地にあり、認知症等、各種疾患を患った方やその家族に向けた地域カフェの開催を進めています。お寺のように地域に根ざした場所が会場ですと皆さん集ってもらいやすいので、他のお寺でも同じようなことができるといいですね」と話されていました。
お寺単独では難しいことでも行政を上手に活用することで可能にすることができる一つの例を「いらしての会」に見ることができました。
これまでの主な取り組み
2014年12月 | これからどのようにやっていこうか・・打合せ |
2015年 1月 | 活動計画作成・名称を「いらしての会」に決定 |
2月 | 認知症とは? (地域包括支援センターくらつき) |
3月 | 認知症になった方の「食」の問題(金沢西病院) 簡単な体操(金沢西病院) |
4月 | 認知症の方への接し方(春日ケアセンター) |
5月 | 介護保険制度とは?(金沢西病院・新世紀ケアサービス) |
6月 | 介護予防教室参加方法(地域包括支援センターくらつき) |
7月 | 介護保険のエトセトラ(専門職みんな) |
8月 | 高齢者の食事・食べられなくなったらどうしますか?(金沢西病院) |
9月 | アロマセラピーとは(ホリスティックアロマケアレスパイト) 訪問マッサージとは(フレアス在宅マッサージ金沢) |
10月 | 大牟田市認知症SOSネットワーク模擬訓練参加報告(金沢西病院) 施設の違いを知ろう(地域包括支援センターくらつき) |
11月 | みんなで歌おう お箏伴奏 (幸村忠子さん) |