宗教は、人を救うもの
宗教は、人を救うもの。人の苦悩を救うのではなく、苦悩する人を救うのです。

宗教は、人を救うものでなければなりません。しかし、それは人の苦悩を救うのではありません。苦悩する人を救うのです。浄土(じょうど)の教えも、念仏も苦悩する人を救うために見出された真実の法です。

ところが、私たちは、この浄土も、念仏も、人の苦悩を救うための方法としてしまっていたのではないでしょうか。

人の苦悩を救う方法となった時、それは、苦しみを除き、悩みを消そうとするものとなってしまいます。苦しみや悩みがなくなってしまう時、私たちはこの苦しみと悩みを生きている自分自身さえ見失ってしまいます。生きている感覚さえ奪われてしまうのです。

現代という時代は、まさに、この人の苦悩を奪うことを人の幸福として追求してきた結果、生み出された時代です。それが、今日の日本という社会の中に、生きる喜びが(うしな)われてしまった原因だと思います。

今、この時代を救い、社会を救うために、浄土と念仏の本来のはたらきに気づかなければなりません。そして、念仏の言葉によって、自身の言葉を照らし出さなければならないのです。そして、それぞれの言葉が念仏に響きあった時、その言葉が、自らを救うのだと思います。

『生きる力』(東本願寺出版部)から・梶原敬一(姫路医療センター小児科医師・真宗大谷派教学研究所嘱託研究員
『真宗の生活 2007年』
※『真宗の生活2007年版』掲載時のまま記載しています。

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