目次
こども報恩講~ありがとうのお参り~
2016年11月3日(木)、長崎教区第3組の「こども報恩講」が正法寺を会場に開催されました。例年、「こども報恩講」は教化活動の拠点である佐世保別院を会場に、別院報恩講の期間中に行われていましたが、今年度は教区の宗祖750回御遠忌並びに同朋会館完成奉告法要等の諸事情により、実施については各組にゆだねられる形となりました。
テーマに沿って「報恩講」の意義をわかちあう場に
「こども報恩講」を楽しみに待っている子どもたちのためにも、第3組では、なんとか実現できないだろうかという話し合いがもたれ、開催に至りました。今回は新たにテーマが設定され、「『報恩講』~ありがとうのお参り~」。これにより、子どもたちと報恩講の場をわかちあうための土台が作られていたように感じました。
こうして組に引き継がれた「子ども報恩講」。新たな会場には、「子ども報恩講」で引き継がれてきた手づくり幕が入り口に取りつけられ、訪れる子どもたちを待ち受けることになり、当日は、組内各寺院から100名を超える子どもたちが集まり、若手の僧侶を中心とした住職・坊守・保育士のスタッフを合わせ約120名近くの参加というにぎやかな報恩講になりました。
子どもが導師の勤行・子どもとの対話を大事にする法話
報恩講の最初は勤行。組内の僧侶が出仕し、導師は子どもがお勤めし、堂内は響きわたる子どもたちの正信偈と念仏の声によって荘厳されました。
お勤めの後は、法話です。組内住職が講師を務め、今回のテーマに沿った「親鸞さまありがとう」という講題のもと、「親鸞聖人に遇った鬼」の話を中心に、子どもたちと一緒に体を動かしたり、対話しながら報恩講の意味を共に確かめ合う時間になっていました。
また、続く人形劇までの間は、準備などで間延びしてしまうので、手遊びなどを取り入れたアイスブレイクの時間が設けられ、子どもたちが人形劇に親しみやすい雰囲気になるよう工夫されていました。
人形から作った本格的な人形劇
アイスブレイクの後は、いよいよ人形劇の始まりです。若手の僧侶を中心に、忙しい合間をぬって人形および舞台製作・練習などの準備を重ねられ、スタッフそれぞれの特性をいかして役割分担し、準備には約1ヶ月の期間を要したそうです。
脚本は子どもたちにも知名度の高い絵本『ともだちや』(作:内田 麟太郎 絵:降矢 なな 出版社:偕成社)を人形劇用に脚本化されたものに、今回は「共に生きている」というメッセージが込められたアレンジが加わったもの。
基本となる脚本の執筆は過去の「こども報恩講」スタッフが行い、テーマに合わせたアレンジもその年のスタッフによって年々加えられてきました。
今回アレンジを加えたスタッフに、お話をうかがうことができました。
『ともだちや』を題材に選んだ理由は、初心者でも時間的に演じやすいということ。また、登場人物の絵が多いことから、人形劇として製作しやすいからとのこと。
脚本を書くコツについても、状況の説明が多くならないようにすることが大事だと言います。そのため、セリフもシンプルにまとめ、聞き手である子どもたちの感性が尊重されるようなつくりにされたそうです。
なんと、この人形劇には、『ともだちや』に合わせたオリジナルソングで幕をあけ、幕を下ろすのもオリジナルのエンディングソングを用います。劇は何もセリフのあるときだけではなく、そのはじまりから終わりまででワンセット。脚本に合わせてスタッフがオリジナルソングを作ってきたのも、この長崎教区「こども報恩講」の伝統だそうです。
細部までこだわりの詰まった伝統ある人形劇。子どもたちは登場する人形の動きや言葉に目を輝かせながら見つめていました。最後は人形に駆け寄り、話しかけながら触れ合う子どもたちの姿がとても印象的でした。
こうして好評を博した人形劇のあとは、閉会。
今回「お華束子ども報恩講バージョン」(『ひとりから』第14号・青少幼年センター子ども会情報誌)を参考に、お餅の代わりにお菓子をお備えされていました。それを参加者一同お下がりとしていただき、子どもたちの笑顔あふれる報恩講が無事に勤め終わりました。
取材を終えて
「ありがとうのお参り」というテーマのもと勤められた今回の「こども報恩講」。未来を生きる子どもたちのためにというおもいが、いつどのようなかたちで実るかどうかはわかりません。しかし、蒔かれた種がなければ実ることはありません。この「こども報恩講」をつないで来て下さった私たちの先輩方は、念仏の種を1粒ひとつぶ我が子をおもうように植えてこられたのでしょう。その御恩をおもう時、つながれていくご縁の大事さを感ぜずにはいられませんでした。
宗祖親鸞聖人御誕生850年並びに立教開宗800年をお待ち受けする今、宗祖の報恩講と合わせ鏡のごとく、未来を生きる子どもたちに伝えられたことを、私自身が次に伝えていくという確かな歩みが必要なのかもしれません。
(長崎教区通信員 武宮 法紹)
資料②「こども報恩講」の開催趣旨と次第
開催趣旨 |
わたしたちはふだん「あたりまえ」とおもっていることはほんとうは「ありがたい」ことなのです。そのことにきづいたときに「ありがとう」といえるのではないでしょうか。「いきている」ということは「あたりまえ」ではありません。いろいろな人やはたらきにささえられてあるのです。そのことにきづくおまいりが「ほうおんこう」です。このことを750ねんまえにおしえてくださった「しんらんしょうにん」のことばにであってみませんか。 |
式次第 |
一、勤行
正信偈 草四句目下 同朋奉讃 和讃 弥陀成仏のこのかたは 二、幹事挨拶 三、法話 「親鸞さまありがとう」(20分) -アイスブレイク(5分)- 四、人形劇 「ともだちや」(30分) 五 恩徳讃 |